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ドラッグ・ウォー 毒戦のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ドラッグ・ウォー 毒戦(2012年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

中国にある麻薬製造工場で爆発が発生し、現場から逃走した車が事故を起こす。運転していた香港のテンミンという男が病院に担ぎ込まれるが、麻薬捜査官のジャン警部は、テンミンが麻薬組織に大きな関わりを持っていると察する。麻薬密造には死刑判決が下るため、ジャン警部は減刑と引き換えでテンミンに捜査協力を要請するが…。

題名通りの麻薬戦争をドキュメンタリータッチで、静かだが緊張感あふれる演出で描いた香港ノワールの傑作。
本作は中国本土を舞台とし、中国公安警察の捜査官を中国人俳優が演じ、これまでの香港ノワール作品とは一線を画す緊迫感。
捜査官と犯罪者の疑心暗鬼の駆け引きはスリリングだ。

麻薬組織の男テンミンの死刑から逃れるためになりふり構わない姿は印象的だ。
テンミンは、自分が死刑にならないためには仲間を売ることも厭わない。
ジャン警部から揺さぶりを掛けられると、あからさまに情報をチラつかせる。
その何としてでも生き残るろうとする執念が際立つ。

テンミンの情報をもとに潜入し、役者顔負けの演技力を披露するストイックな主役のジャン警部とて、執念を持って麻薬を扱う犯人を捕まえようとしているという意味ではテンミンと同じだ。

作戦を的確に指揮し、敵を信じ込ませるため、自身の健康を顧みず麻薬まで摂取する無謀な猛進を続けるジャン警部。
対して状況判断に長け、捜査官との協力態勢下でも思惑を悟らせないテンミンのしたたかさが、安易なバディものとは一線を課す。
テンミンの情報は本当なのか、いつ裏切られるのか分からないスリルを生み出す。

主演の2人だけでなく、ジャン警部を支える実に有能な捜査班や、テンミンに恩義がある麻薬精製工場の聾唖兄弟も魅力的で、時に人情味があり、時に有能な戦闘員ぶりを見せ、善悪ともに個性的な顔ぶれが見る者に強い印象を残す。

前半の「潜入捜査がバレてしまうのか…?」というサスペンスも良いが、捜査する側の執念と麻薬組織側の生き残りを賭けた執念がぶつかり合う、最後の小学校前の路上での、北野武映画に似たドライな銃撃戦はまさに狂気の産物。

登場人物のほぼ全員が死亡する激しさ、
死すジャン警部が手錠で自分を繋ぎ止め、結局は逃げられず、死刑執行されるテンミンの哀れな末路。
双方が死を迎えるカタルシスとは無縁の言い表せない無情感が重い。
これまでの努力は何だったのか…?
狂気に似た執念の果ての因果応報。
重厚感のあるノワール作品だ。
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