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罪の手ざわりのBOBのレビュー・感想・評価

罪の手ざわり(2013年製作の映画)
3.8
中国の名匠ジャ・ジャンクー監督がカンヌで脚本賞を受賞した、4つの実在の犯罪事件を基とするオムニバス形式の犯罪ドラマ。

「お前は自分の罪を認めるか」

ジャ・ジャンクー監督作品、初鑑賞。

パワフルでセンセーショナル。劇的な経済発展を遂げる現代中国の片隅で、もがき苦しみながらもひたむきに生きる"普通の人々"の姿を描いた社会派リアリズム群像劇。

各主人公が、拡大の一途を辿る格差社会への違和感や不満、苦しみ、苛立ちを募らせていく静かな人間ドラマパートと、最後の最後に爆発するヴァイオレンスの対比があまりにも鮮烈。

全4話から成るオムニバス形式。冒頭の衝撃的な連続射殺劇に始まり、2話、3話、4話と進むに連れ、絵的にはソフトになっていった印象。順番から想像するに、監督は若者の孤独と自殺こそ、一番憂うべき社会問題だと捉えているということなのだろう。

個人的には、1、3、4、2話の順で好き。第1話のチアン・ウーと、第3話のチャオ・タオの鬼気迫る演技に魅せられた。チャオ・タオの"殺陣"シーンは、日本の時代劇を想わせるカット割りがなされていて、バチバチにキマっている。切れ味鋭い映像に痺れた。

①「正義はあるのか」
村の共同所有だった炭鉱を実業家に独占されたことに怒る、山西省の炭鉱作業員🐅。モクモクと煙を吐く工場🏭。

②「銃声にすかっとするのさ」
妻と子に出稼ぎだと嘘をつき、各地で強盗を繰り返す重慶の男。

③「人を殺しました」
客からセクハラされる広州の風俗受付嬢🐍🔪。カネで女を買う。やくざな通行料徴収員。高速鉄道事故。黄砂。

④「小鳥」
裁縫工場の工員、ナイトクラブのウェイター、部品工場の工員と職を転々とする、湖南州出身の孤独な青年。仏教。北京語、広東語、英語。台湾巨大資本の参入。

「動物も自殺するのね」「幸福に死ぬよりも悲惨に生きる方がマシよ」「動物はそう考えない」

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