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胸騒ぎの恋人のkouのレビュー・感想・評価

胸騒ぎの恋人(2010年製作の映画)
3.5
《カラフルな三角関係》
あのグザヴィエ・ドランが三角関係を描くと、こうも鮮やかでカラフルで、それでいて面白く描かれる。本当に驚かされるのは、そのなんてことのない、誰もが経験するような題材なのに、哲学的で物憂げで、それでいながらどこか可笑しさのあるところだ。

フランシス(グザヴィエ・ドラン)とマリーは親友だったが、パーティで美青年ニコラに二人共一目惚れをする。この映画で特に印象的なのはスローモーションの使い方だろう。例えば彼らが恋に落ちたとき、恋愛対象のニコラの表情。見とれていたり、微妙な感情だったり。グザヴィエ・ドラン監督はそれをスローモーションを多用してゆっくり見せる。それは観客が同時にその場にいるような、同じように相手の表情を見たり、同じように感情の起伏を読み取るように描くのだ。その繊細な視点、時間の枠を超えた表現に感心させられる。

そして登場人物のファッションも良い。表現は単純ではあるが、「とにかくオシャレ」。鮮やかで映画に色彩を与えている。2人はニコラに会う前にしっかりオシャレをして会いに行くのだが、そこで使われるのが「Bang Bang」だ。どこか覚悟を決めて何かに向かっていくような雰囲気が面白い。

今作は前作と比べるとややポップである。ラストの展開は円環構造になっていて、また始まりを思わせる。人と人の恋について描いた面白い作品だった。
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