キャサリン

それでも夜は明けるのキャサリンのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
3.9
史実的な映画に対して、星の数でジャッジすることの難しさを感じるのだけど…
自分が映画の鑑賞者であるとともに、この問題への"傍観者"であるように感じてしまってチクチク。

「自由黒人」だったからこそ、主人公には夜明けが来たわけで、でもこれをただのラッキー話で終わらせることもできなくて。
生涯奴隷身分の人たちの苦痛は計り知れないし、その生活の中で自分なら人間としての尊厳を維持していられるだろうか…と考えたり。
そもそも「自由黒人」というレッテルも恐ろしすぎるし、「黒人」という大前提のせいで差別は生じていたわけで。

鑑賞後に調べてみたけど、奴隷解放宣言も、表向きは差別への疑問視でも、本音のところではマイノリティによる暴動抑制という政治的な意味合いもあったというのも、結局利用されてしまっているようで虚しい。
事実、現代に至っても人種差別は無くならないし。
アメリカンドリームを求めて世界各国から人が集まるのに、実際の国の内状は今も昔もさほど変わっていないのかもな、とまたまた虚しい気持ち。
人間の肌の色なんて、ルーツとなる環境によるもので、その環境に適応するために発達したイチ個性でしかないはずなのに。
それに日本にいたらあまり意識はしないけれど、世界に出たら同じようにアジア人差別だってなくなってはいないし…
移動手段の発達した現代において、そもそも人種というアイデンティティってどれほど重要なのかしら、とふと思ったり。

何かの論文で、人間を「所有物」とみなすことは、本来西欧の宗教思想上あり得ないはずなのに、
それでも奴隷貿易のために、
彼らを所有物たらしめるために、
こじ付け的に彼らから人間性を剥奪したとあった。
一部の人間の私利私欲のために教義を曲解してまで己の正義を貫こうとする気持ち悪さって、実は「昨日は粗食だったから今日はたくさん食べてもいい」みたいなよくわからない言い訳っぽくて、次元は全く違えどやっぱり人ごとには思えなかったり…
(うさぎを一羽二羽と数えることで食べてもOKにした感覚を人間に適用したのと近いよなこれ…)

ところで、今作はアカデミー賞受賞作とのことだけど、
作品賞の審査基準として一般的に"マイノリティ"と称される人々を積極的に起用することがノミネートの条件ってのも、一歩良き社会へステージが進んだようでもあり、
これまでの仕打ち(?)に対する突貫工事的掌返しにも思えてモヤモヤあり…。
女性政治家を国会へ!と同じ違和感というか。
良い映画が、ただ差別なく良いジャッジを受けられればそれでいいはずなのに…。
それに結局のところ選考委員会の構成員の比率は未だにアンバランスだという。
この映画自体、とても見てよかったと思えた映画だったけど、マイノリティの苦悩を描く映画にマジョリティがボラボー!という選考って、なんかそれ…って気もしなくもないよね。
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