ニャーすけ

それでも夜は明けるのニャーすけのネタバレレビュー・内容・結末

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

劇場公開時に鑑賞してから10年以上ぶりに観たが、登場する白人のほとんどが一切救いようのないゴミクズばっかりで少し笑ってしまった。
小学生のクソガキが好きな子をいじめるのとまったく同じノリでルピタ・ニョンゴを虐待するファスベンダー、役立たずの日和見偽善者カンバーバッチ、最低最悪の差別ソングを歌ってイキるもタイマンではあっさり負けるヘタレチー牛みたいなポール・ダノなど枚挙にいとまが無いが、その中でも断トツでヤバいのがサラ・ポールソン。セックスレスのしょうもない嫉妬から、日常的にニョンゴを息をするように暴行したり(ウィスキーデキャンタを顔面に投げつけたときの生々しい音!)、信仰と愛欲との狭間で引き裂かれるファスベンダーを煽って彼女を拷問するよう仕向けたりと、夫とその妾を同時に傷つけ悦に入る残虐性と憎悪が凄まじい。まだ未見だが、この人が悪役を務める『RUN/ラン』や『ラチェッド』もより観たくなった。

本作は「白人の救世主」を論拠とする批判でもって槍玉に挙げられることも多い作品だが、実在の出来事を元にした物語にまでこんな筋違いの難癖を付けるような連中は勝手にSNSでお気持ちでも表明しとけバカと吐き捨ててやりたくなる。
が、しかし。本作におけるその白人救世主を演じるのが、プロデューサーも兼任するブラピというのは如何なものだろう? お前、いくらなんでも職権濫用が過ぎるだろ! いや、職権濫用だろうが俳優のエゴだろうが面白ければ構わない(だから「ミッション: インポッシブル」のトムは許されている)のだけど、この悲劇的な実録映画でこんなやり方は普通に冷めるし、萎える。
とはいえ、この致命的なノイズがありながらも、本作終盤の演出は本当に素晴らしい。キウェテル・イジョフォーが奴隷から解放される場面では、ピントの合わない背景に慟哭するニョンゴをさりげなく映すことで、この結末が単純な御涙頂戴になってしまうことを回避している。そして、ついに家族との再会を果たすラストシーンは、静謐ながら激しく感情が昂ってくる芝居に心を震わせずにはいられない。

近年『ゲット・アウト』や『隔たる世界の2人』等々、黒人差別をテーマとした芸術的なホラー映画が人気を博しているが、それらがどれも自分の琴線にまったく触れない理由がわかったような気がする。所詮作り物の恐怖が史実の不条理性に勝てるわけがない。
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