JIZE

フィフス・エステート 世界から狙われた男のJIZEのレビュー・感想・評価

3.6
日々流動化するIT業界を舞台に"ウィキリークス"という"内部告発(新興)サイト"をベネディクト・カンバーバッジ演じる創設者"ジュリアンアサンジ"が開設し暗号化された機密情報を紐解き汚職調査を詮索し不正を裁く!!...という情報機関モノor実話ベースのお話。ロジックや解釈でも一筋縄ではいかない大作でした。アメリカ本国では興収共に悲惨なコケ方をしアサンジ本人からもカンバーバッジ出演を直接的に否定する文面を送り賛否を醸し出したみたいです。映画的立ち位置で言えば,事実上の"実話問題作"なんだと思います。

IT用語や歴史的事象に至る情報量だけでも正直相当多かったです。同ジャンルの近作『ソーシャルネットワーク』や『スティーヴジョブズ』に匹敵する程。なので鑑賞後も頭がクラクラし上映時間128分と決して安易に解読出来る作品でもない難解な印象でした。

また,情報機関モノ特有のスピーディなハイカラ世界を促す秒単位のPC接戦やラストに待ち受ける大転調も一応は快感(カタルシス)として一定以上備わってます。が,何しろ一分一秒に至る緻密的情報量が多い為,展開自体の把握と快感享受の同時進行がどうしても間に合わず追いつきませんでした。カンバーバッジは『イミテーションゲーム』アランチューリング役や『SHERLOCK』ホームズ役など天才モノの役柄が意図してか連続的に多い為このような天才肌を匂わす役柄は本当彼自身の資質と合致し違和感を微塵も感じさせない役回りは素晴らしい演技だと思います。中でも冒頭,タイプライターや白黒テレビがズームアップ気味に映し出される描写は『イミテーションゲーム』が始まったかと見違う程。

では,今作の結論を述べると,「ウィキリークス」の創設者であるアサンジ視点ではなく相棒"ダニエル視点"で客観的に偏離を強調し描き切った遠隔構成が外連味を効かない観やすさやメタ的な意味合いで心底良かった!!同時に中盤から終盤に向けアサンジとダニエルの経営方針(価値観)上で相違から亀裂が生じ仲違いに転じる展開が昨今同じ伝記映画『ソーシャルネットワーク』マークとエドワルドの関係性を踏襲した風で似て非なる印象を強く受けました。アサンジのエゴイズムな人柄とダニエルの協調的で寛容さを保つ温暖な人柄は何処までも対極的で違う素質を兼ね備えるからこそお互いが惹かれ繋がり合いラストの衝撃に向け加速..

アサンジが英雄or反逆者かの問いで言えば事実的な社会的側面(行為)では確実に後者だろうけど不正を裁くモラル的側面では確実に前者だと思う。突出する発想力や行動力,少しの犠牲を厭わずも押し切り頭脳明晰なアサンジの野心的な使命感は何かに取り憑かれたような怪訝さor危うさを激情に乗せ垣間見せエゴな自我欲求と自らが対峙し信念を貫く様は痛々しくも内面の弱さを微塵も出さない分,強く『イミテーションゲーム』評の際にも述べましたが"天才故の孤独"が浮き彫りに彼の実態を投影してたように思う。

カルト集団の一連を深掘りしなかった構成も物語の根深さを掻き混ぜ過ぎない上で好感が持て投稿プラットフォームや巨大不正組織とのVS構造を本幕に立てたのが実に面白かった。終盤,アサンジが相棒ダニエルに対し「人間なんてどれだけ同じ時間を共有しても相手の本質は分からない。」この言葉がアサンジの現在までに至る壮絶な深刻さを自明し感慨深く胸を打ちました。。逃亡生活や変装,偽名,携帯電話の暗号化など彼にしか分からない世界(闇)が彼を覆い不可逆的な哀しみはカンバーバッジ演技から放たれ同時に感動。盗聴防止を神経質気味に気に掛けるプロ気質も独創的な人柄を自明させ人権活動家の不正と闘う姿は脅威的だけど脆弱的な危うさを心の奥深くにしまい込んでる風でした。。SF小説やホラーゲームを否定し求められる人材の例として本人たちの目の前で唱える描写は笑えましたけど。

従い,アサンジの白髪設定やウィキリークス組織実態の実情孤独さ,第5権力(フィフスエステート)の題材もアサンジの深刻な心情と重ね合わせ感慨深く思う。『イミテーションゲーム』に次ぐカンバーバッジ主演の伝記モノとして最高傑作。勿論,実話なので歴史的事象を掘り下げ下準備たっぷりで鑑賞すれば尚更楽しめますね。情報量の過剰さやロジックの難解さでも『イミテーションゲーム』以上だと思うのでベネ様ファンは勿論,それ以外の情報機関モノ好きも必見!!です。アサンジがウィキリークスの存在意義を再確認し不正による隠蔽を裁き使命感に燃え上がる彼の闘志は狂気質剥き出しな程に本物でした。国際問題に目を向け改めて情報漏洩の恐ろしさ隠蔽情報(不正)に対し告発する勇気,権力を濫用する組織の根絶実態,ウィキリークスの知られざる真意,を吟味し紐解く上では機密情報にあなた自身がログインする上で是非,お勧めです!!
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