小波norisuke

そこのみにて光輝くの小波norisukeのレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
5.0
陽光が二人を包む美しいラストシーンに救われた。

「そこのみにて光り輝く」なんて端的で、温もりを感じさせるタイトルなのだろう。

ウィスキーと煙草、汗と血、そして潮の匂いが漂ってくる。

コンクリートの冷たさ、土のざらつき、潮風のべたつく感触、肌の温もり、鼓動、息づかい、すべてが生々しい。

公式サイトや予告を観て、この映画は観たくないと思った。生々しさが辛そうで怖かったのだ。しかし、様々な媒体のインタビューで、綾野剛さんが語られた言葉に惹かれ、俄然、観たくなった。

「自分のすべてを生け贄のように捧げました」
「役に入るために、プロデューサーと監督の許可をもらって、酔っ払って芝居をしたわけではありませんが、毎日、お酒を飲んでいました」
「ウィスキーが喉を通るときに、かっと熱くなって、そのあと体に重心となって溜まる、その重心を必要とするシーンがいくつかありました」

怖れていた生々しさは、嫌悪するものでは決してなく、生の人間がもがき、孤独にさらされ、家族やしがらみの重さに耐えながら、人を慈しむ姿をリアルに伝えてくれて、とても美しかった。

綾野さんが語られたウィスキーを飲んだときのように、はじめはかっと熱くなり、後からずしりと重みが体に溜まってくる映画。劇場で号泣、帰途の電車の中で反芻して落涙、家に帰ってまた嗚咽。

拓児のこれからが一番気になった。
小波norisuke

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