陽光が二人を包む美しいラストシーンに救われた。
「そこのみにて光り輝く」なんて端的で、温もりを感じさせるタイトルなのだろう。
ウィスキーと煙草、汗と血、そして潮の匂いが漂ってくる。
コンクリートの冷たさ、土のざらつき、潮風のべたつく感触、肌の温もり、鼓動、息づかい、すべてが生々しい。
公式サイトや予告を観て、この映画は観たくないと思った。生々しさが辛そうで怖かったのだ。しかし、様々な媒体のインタビューで、綾野剛さんが語られた言葉に惹かれ、俄然、観たくなった。
「自分のすべてを生け贄のように捧げました」
「役に入るために、プロデューサーと監督の許可をもらって、酔っ払って芝居をしたわけではありませんが、毎日、お酒を飲んでいました」
「ウィスキーが喉を通るときに、かっと熱くなって、そのあと体に重心となって溜まる、その重心を必要とするシーンがいくつかありました」
怖れていた生々しさは、嫌悪するものでは決してなく、生の人間がもがき、孤独にさらされ、家族やしがらみの重さに耐えながら、人を慈しむ姿をリアルに伝えてくれて、とても美しかった。
綾野さんが語られたウィスキーを飲んだときのように、はじめはかっと熱くなり、後からずしりと重みが体に溜まってくる映画。劇場で号泣、帰途の電車の中で反芻して落涙、家に帰ってまた嗚咽。
拓児のこれからが一番気になった。