マヒロ

恐怖のまわり道のマヒロのレビュー・感想・評価

恐怖のまわり道(1945年製作の映画)
3.5
歌手として一花咲かせるためにハリウッドに行った恋人を諦めきれないアル(トム・ニール)は、お金がないためヒッチハイクで何とかして彼女の元へと向かおうとしていた。途中、金持ちの男ハスケル氏に拾ってもらい順調に旅を続けていたが、ある出来事をキッカケに絶望的な状況に叩き落とされることになる……というお話。

60分ちょっとと短めの作品だからか全体的に駆け足気味で、物語上大きなイベントであるハスケル氏との別れや、道中で出会うヴェラという女が本性を露わにする場面もほとんどタメなく唐突に展開が変わっていってしまうが、その雑にすら見えるほど急転直下に物語が転換していくスピード感が個性になっているのが面白い。

主人公のアルはとことんついていない男で、あらゆる選択で間違いを選び続けてどんどんドツボにハマっていくんだけど、そもそもハリウッドに向かうのにロクにお金も持たずにヒッチハイクだけで向かおうとして案の定立ち往生したりと(到着したところでどうするつもりだったのか……)、不運なだけでなく単にニブい奴でもある。あからさまにおかしなヴェラの言うことにも反発しきれずながされるままだったり、ハードボイルドな佇まいの割には終始情けないところしか見えないというのが逆に新鮮だったかも。

ハリウッドのノワール映画とはちょっと違って気取ったところがなく、ひたすらに悲惨な方向に転がり続けるだけのストーリーがなかなかに強烈な一作だった。

(2023.41)
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