教授

東京の恋人の教授のレビュー・感想・評価

東京の恋人(1952年製作の映画)
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まるでヨーロッパのコメディ映画を観るようなモダンな映像にまず驚いてしまう。
その傍らにはまだ、空襲の後が残っている東京で、横たわる貧しさと成金たちの価値観の差を当時から描いているという視点にも驚いてしまう。

「50万円の指輪」を巡る「本物と偽物」を巡るドタバタ。「生と死」が絡むシリアスさとコメディの転倒。
一見「キザ」に見える三船敏郎が殺風景な借家に住んでいたり、潔癖さを纏い「ニセモノは嫌い」と嘯きながら、友人のために「嘘をつく」ことを依頼する原節子など、当初はそう見えていたものが、実は違う側面を持ってしまうという多層的な人物描写がなかなか見事。

一方で、タイトルにあるように「東京」を巡る街の風景もしっかり切り取られ、跳ね橋を使った主役2人の精神的な距離感の変化を見事に演出している。
あっけらかんとしたコメディとしての佇まいの中に花火の音で空襲を思い出す、という毒のある描写を挟み込むなど油断できないつくりで驚いた。
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