ochiba

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅のochibaのレビュー・感想・評価

4.1
主人公は、ウディという老人。

とくに打ち込める仕事や趣味もなく、いつもボサボサの髪にヨレヨレの服。
家に親しい友達が訪ねてくる様子もなく、唯一の楽しみといえば安酒を飲むことくらい。
家族は口うるさい妻と、良好な関係とはいえない息子たち。

ある日、インチキの懸賞金(100万ドル)の当選ハガキが届くと、これから歩いてネブラスカを目指すという。
見かねた二男が、しかたなくネブラスカまで二人でドライブすることに。


ここから、かつて家族が住んでいた町で親類の家に立ち寄ったり、懸賞金のことで町が大騒ぎになったりして、ホントにいろいろあるんだけど… 。


共に旅をしていく中で、知らなかった父親の過去の話聞いたり、二人の時間を重ねていくことで、今までとは異なる父親像と一時代を生きぬいてきた一人のアメリカ人の物語として、くっきりと別のウディ像が浮かびあがってくる事が一つ。

そして、ネブラスカにのこった人々。
ふるえる程恐ろしいくらいに、狭い空間と他者との関係性の中で同じ時間を繰り返し生きてきた人たち。

ラスト付近での。買ったばかりのトラックを颯爽と運転するウディ。それを見つめる〈だけの〉ネブラスカの人々。
止まったままかのような田舎町に、いちまつの風が通りすぎるように。風はまた帰るべき場所へ帰って行く。

たぶん本当はそんな意味のシーンではないと思うんだけど、僕にはそんなせつない対比に見えました。


ウディ。ほんの一瞬だけかも知れないけど、これまでのことが報われたみたいで良かったですね。



それにしても、モノクロ + ロードムービー = テッパン、ですかね?
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