こたつむり

ファインディング・ドリーのこたつむりのレビュー・感想・評価

ファインディング・ドリー(2016年製作の映画)
3.7
楽しい世界観、愛すべきキャラクタたち。
『ファインディング・ニモ』の正統派続編。
揺るぎない安定感たっぷりのピクサー印。

前作の舞台は大海原。今回の舞台は水族館。
それでも前作と同じように“物語の拡がりを感じる”というのは脚本が秀逸だからですね。そもそも、一緒に鑑賞している子供が夢中になっているか否か。それを見るだけで良作だと判断できる次第です。

また、「え。これって魚たちの物語だよね?」
なんて思わず言ってしまう斜め上の展開もありました。さすがは子供の頃から英才教育を受けるアメリカですね(補足:カークラッシュして遊ぼう!という玩具があるのです…対象年齢5歳以上)。

というわけで。
良作であることは間違いなし。相性はありますけどもお薦めしやすい作品…の筈なのですが、正直なところ、釈然としない何かが心に残ったもの事実でして。三日三晩、無い頭を振り絞って考えましたところ。

前作は父と子の物語でした。
なので、自然な形で主人公であるマーリンに感情移入することが出来ました。そして、本作は“自分と考え方が違う他者を受け入れることが出来るか”という物語。つまり、臆病で慎重で計画的なマーリンが、能天気で健忘症だけど独創的なドリーを受け入れることが出来るか…そういう物語なのです。

そして、自分の性格を振り返ってみるに。
まんま、マーリンなのです。
臆病で慎重で計画的で。冒険的なことは避けて通る。そんな性格でありますから、自分がドリーのような他者を受け入れることが出来るのか。そう考えてしまうと、胸にしこりが残る次第なのです。

しかも、マーリンも僕も。
アドリブに弱いのですよ。想定外のことが起きると、頭がスポンジになってしまうのです。だから、劇中でドリーが「素敵なことは偶然から起こる」と放った言葉が楔になって心に刺さるのです。

確かにドリーが言うことは事実なのでしょう。
全ては偶然。難しく考え過ぎたら一歩も踏み出せなくなる。しかしながら、肩に背負うものを考えてしまうと、何も考えずに動くことが出来なくなるのも事実。その事実に挟まれながら、どうすれば良いのか。それを考えてしまうのです。

まあ、そんなわけで。
表層だけを捉えれば完成度の高い作品でしたが、根底に流れる重いテーマに押し潰されてしまったのでした。むぎゅ。
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