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シンデレラのbutasuのレビュー・感想・評価

シンデレラ(2015年製作の映画)
2.0
以下、アニメ版が大好きな人間の戯言。

そもそもアニメ版では、ほんの僅かな時間、舞踏会で出逢っただけ。しかもシンデレラは相手が王子だとは知らぬまま。だからこそロマンチックであり、あれが夢のような邂逅だったわけである。ところが今回、二人は事前に森の中で会っており、会話まで交わしている。これでは話全体のトーンが全然変わってくる。あんなにお互いを知り合ったなら、ガラスの靴とかじゃなくて普通に探せそうな気もするが。事前に一回会ってるわけだし、お互いあの森に通い続ければ絶対再会できるだろう。

シンデレラの言動もあまり好感が持てなかった。終盤、継母に向かって「父をあなたから守れなかった」と言うのはさすがに酷くないか。まるで殺したかのような口ぶりである。「あなたを許すわ」という台詞も嫌い。この話のシンデレラは、アニメ版と違って長年虐げられてきた存在ではない。ほんの最近までは優しくそこそこ裕福な家庭で育ってきた娘なのだ。だからこそこのシンデレラからは夢見る気持ちが全然感じられない。むしろ舞踏会に行くことを当然だと思っていそうな雰囲気がある。アニメ版のシンデレラは虐げられているにも関わらずもっと凛として気高く強く前向きで、動物たちと仲良く毎日を生きている。そんな彼女の唯一の楽しみが夢を見ることなのだ。だからこそようやく叶いかけた夢が文字通り破られたときの絶望感は重いし、夢を信じてきた彼女だからこそ魔法使いは現れるし、ひたむきな彼女を動物達や観ているこちらは応援するのだ。

そして感動を誘うためだけに王様は死ぬ。死ぬ間際に会った見知らぬ女の「息子さんはあなたを愛しています」というだけの台詞に感銘を受け、あの子と結婚しなさいと言う。とても都合の良い存在である。アニメ版の王様はとてもユーモラスで愛らしく素敵だったのに。勿論死なない。

ケイト・ブランシェットは最高だった。配役した人に満点をあげたい。継母は最低なやつだが、自分が最低であることを自覚しながらも不幸な境遇からなんとしてでも這い上がろうとする姿勢に、むしろシンデレラよりも共感してしまったりした。

ネズミと友達になるシーンを序盤出しておきながら、ネズミ達の裁縫シーンなどをバッサリカットしてしまっていたのも残念だった。アニメ版では彼らが第2の主人公みたいな感じだったのに。フェアリーゴッドマザーはもっとふくよかで優しそうなおばあちゃんが良かったなぁ。ビビディバビディブーとかも無し。馬車や家来など、魔法の結果も全体的にケバケバしく品が無く見えた。ただこれは映画全体の色調の問題かもしれない。ちょっとティム・バートン感があるんだよなぁ。シンデレラも魔法の前後でそこまで髪型や服が変わってないから、気付かれないのが不自然すぎる。せめて髪型くらいはなんとかならなかったのか。舞踏会のシーンも金かけてる割にCGの使い方があまり上手くなく、ダンスシーンのカメラワークの下手さも相まってあまり夢のように素敵なシーンには仕上がっていなかったように思う。

カボチャの馬車を狭い室内で作ってしまう(何で?)シーンや、義姉たちが無理矢理ガラスの靴を履こうとするシーンなど、コメディライクなシーンも全く乗れなかった。

終盤、作品のテーマを全部台詞で言わせるのも品が無い。愛が全てで一番大切である、とかは台詞ではなくて映画のメッセージとして伝わるようにするべき。台詞にした途端陳腐になる。

アニメ版がまた観たくなった。
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