【死体を見せない戦争映画みたい】
とにかく全体ヌルいのと、あっけない結末にガクッ。こんなゆとり映画にしたらリンダ・ラヴレースという人をかえって誤解させるんじゃないだろうか?
『セルロイド・クローゼット』『ハーヴェイ・ミルク』の監督だから期待したのに…。劇映画は向いていないのか、何らか大人の事情が働いてこうなってしまったのか…。
あくまで事実を元にしたフィクションだし、史実に忠実であることが義務でもないけれど、肝心なところから悉く目を背けていると感じます。
女性が見られるようにスイーツ化するのは日本映画のみかと思っていたら、ハリウッドも病状進んでいるのでしょうか?
本作にも登場する、リンダがポリグラフにまでかかって書いた自伝本「ORDEAL」の内容からかなり乖離していますね。そもそも、彼女がチャックと結婚した(させられた)理由からしてスゴイのに、本作では愛し合って籍を入れたように見える。…ぜんぜん違うのに!
監視され日々「稼がされる」奴隷生活の地獄。ディープ・スロートはある理由でサバイブするため身につけたこと、ポルノは幾つも出演済みで、『ディープ・スロート』はその一本としか思っていなかったこと…等々、本作に出て来ないこと多々、あります。
その他ネタバレでしょうからはっきり書けませんが、もう色々と違うんですね…。『ディープ・スロート』で有名になったことが、奴隷生活から脱するチャンスになったことも大きいのに、起点となる奴隷生活をきちんと描かないから伝わらない。
またヒュー・へフナーやサミー・デイヴィスJr.とも呆れる関わりがあったのにスルー…。特にサミーはバイだったそうで、それを利用し夫チャックにディープ・スロート・リベンジを仕掛ける話なんて、当人地獄他人爆笑のクライマックスになる筈なのに勿体ない!
本作の狙いって何だったんだろう? と首を傾げてしまいました。幾つか考えたこともあるのですが…ここでは書かないでおきます。
よかったのはアマンダの表情。私がみた彼女の作品中、一番それが多彩で豊かでした。が、彼女が豊かであるほど、夫の前で「リンダ・ラヴレース人形」を演じるしかなかったリンダ・ボアマンからは離れていきます。
そもそも全然似てませんが、アマンダのアイドル映画としての良さが出てきてしまったところで、その視点からももう違うな…と心、離れました。
しかし一番の驚きは、シャロン・ストーンが見事ストーンと美貌を落として挑んでいることでしたが!
『氷の微笑』でディープ・ノーパンを披露していた彼女が、ディープ・リンクルに覆われ登場した時、はじめ誰だかわからなかった! 女装したピーター・ウェラー(元祖ロボコップ中の人)かと思ったり。
なんでしょうかシャロンさん、今後はジェシカ・ラングあたりのポジションを狙っているのでしょうかね?
<2014.3.10記>