田舎町の景色、ジワジワと蝉の声。川遊びする子どもたち……刺激的な要素は皆無だけど、まったりチルアウトできる良作です。
テンポものんびりして、自分も冬冬たちと田舎で夏休みをすごしている気分になります。
……とはいえ、歌に日本統治時代の名残を感じたり、犯罪者が石で人の頭をかち割ったり、知的障害の女性の妊娠が描かれたりと、シビアな部分もあります。それらは良くも悪くも深く掘り下げられることなく、「ひと夏の思い出」というノスタルジーの部品のひとつとして扱われます。
しかし、ティンティンと寒子の交流のエピソードには、この映画を単なる懐古趣味以上のものにする普遍的な魅力があると思います。あの部分だけはノスタルジーの枠をはみ出して、ティンティンの人生に決定的な影響を与えるような何かが描かれています。
寒子が鳥の死を悼むシーンが美しくてとても好きでした。