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午後3時の女たちのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

午後3時の女たち(2013年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

夫は多忙で構ってくれないし、専業主婦のコミュニティにもうんざりしている主人公のレイチェルが、売春婦のマッケナを自宅に招き入れる話。非日常を求めマッケナを招き入れたものの、彼女に連れられて行った売春の現場でその刺激にドン引きしてしまい、マッケナと距離をとるようになる。それを察知したマッケナは自ら関係を壊し、出て行く。そうしてレイチェルは改めて自分の幸せな境遇を実感する、というストーリー。ともすれば傲慢な金持ちの専業主婦が売春婦を見下すだけの話に見えるのだが、主演二人の繊細な演技により決してそうはなっていないのが凄い(話だけを追ってそう感じる人もいるだろうが)。

レイチェルはずっと何者にもなれない自分に対する満たされなさを抱えていて、だからこそ奔放なマッケナに憧れたのだ。しかし裏を返せばそれは「自分は本来こんなもんじゃないはず」「自分は他のくだらない人間とは違う」という傲慢さであり、それがマッケナとの触れ合いを通じて徐々に表面に露出していく。でもレイチェルは自らそのことに気がつける賢さがあったし、自ら謝罪し行動し自分の人生を取り戻すことができた。

そして売春で生きているマッケナ。見た目は非常にか細いのに、彼女がとにかく強く逞しい。常に恥じることなく堂々としていて、物怖じもしないし泣き言一つ言わない。子守を任されれば全力で応じようと子どもたちのためにおもちゃのブレスレットやキャンディの詰め合わせを用意する。このシーンはなんとも健気でジーンときた。しかし見下されていることを感じとると静かな怒りを見せ、男たちを誘惑しレイチェルの立場を壊して去っていく。「行く場所はいくらでもある」と答えるマッケナの健気な心の強さ。

非常に繊細で良い映画だった。
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