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イコライザーのMUAのレビュー・感想・評価

イコライザー(2014年製作の映画)
3.6
悪役がケヴィンスペイシーに似てた
使命として人助けを黙々とする人柄の素晴らしさ。承認欲求に飢えた時代にはある程度必要ね

【2回目鑑賞】
伏線回収が上手い。警備員志望の男にタイヤのトレーニングを行わせる件も最終的にロバート本人を手助けする役に立つし、最終的に工具店で対決するのも逆算的に設定されたんだろうなあと。
あらゆる手段で悪を倒すロバートのユニークさを堪能できる設定だし、何より最後にテディとの対決で防水シャワーを降らせるというのは憎い演出。ベタだけど発想としては上手いなと。
また、ロバートが対決前のテディに言う「俺の目には何が映っているか」という問いかけに対してアップに映ったロバートの瞳には光さえも反射しておらず、真っ黒である。目が心の窓なのであれば、彼の心には誰よりも暗い闇が広がっているに違いない。そしてその黒い瞳は、最後の対決まで守られるのだ。その瞳がロバートを征服する時、彼はイコライザーという正義ではなく、衝動的な殺人意欲に忠実に基づいて抹殺を行っているのではないか。
つまり内に秘めた衝動的な殺人意欲を、正義という、ある種の”言い訳”の名の下で実行しているとも言える。
工具店というイメージは善良で家族思いな父というイメージも抱かせる事が出来るし、職場の仲間を手助けする行動も、いくら何でも気持ち悪いほど「善良」である。それはロバートが、社会的に自分の立場を頑なに自身の中で善良として認知することによって、かろうじて理性を保とうとしているのではないだろうか。

後にロバートが強迫観念を抱いているという設定を脚本に取り付けたとの事だが、社会的な彼のポジションと潜在的な衝動があまりにも正反対である限り、恐らく彼の精神病は治る見込みがない。これは彼の語られなかった過去の詳細が不明なので推測でしかないが、このままではロバートはプログラムされた意思に対して忠実なロボットでしかなくなるだろう。
若い娼婦を救出するというくだりは「タクシードライバー」を連想させるが、運命に流されるか、運命を忠実に利用するかという自分の人生に対しての意思が今作とでははっきりと違うと感じる。そう考えるとよりリアリティがあるのはタクシードライバーの方だが、潜在的な闇の度合いで言えば間違いなく今作の方が深く、苦しいのだと思う。
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