イチロヲ

ラブホテルのイチロヲのレビュー・感想・評価

ラブホテル(1985年製作の映画)
4.0
借金の取り立て屋に妻(志水季里子)を強姦された男(寺田農)が、その腹いせとしてホテトル嬢(速水典子)に狼藉をはたらいてしまう。人生の瀬戸際に立たされた男女の交流劇を描いている、日活ロマンポルノ。ディレクターズ・カンパニー共同製作。5週連続のロングランを記録。

石井隆脚本なので、主人公は村木と名美のコンビ。肉と心が分離した状況下での男女関係が説かれており、「セックスって何だろう?」という自問自答が痛烈に伝わってくる(当初は妻役を宮下順子が演じる予定だったらしい)。

撮影現場はかなり過酷だったようだが、紛うことなき相米慎二の映画術が冴え渡っている。カメラの長回しと長台詞が印象鮮烈であり、中川梨絵の登場シーン(11年ぶりのロマンポルノ出演)では、速水典子を追いかけて、ビル内を縦横無尽に走り回る。

ポエミーな台詞回しと山口百恵の挿入歌を多用した感傷ムードがあまりにも露骨。内向的な性格の村木への感情移入も困難だが、ホテトル嬢という特殊な職業に「聖性」を見てしまった男という観点では、同調できるシンドロームといえる。
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