マルケス

おやすみなさいを言いたくてのマルケスのレビュー・感想・評価

3.5
冒頭のシーンが意味するものを知った時、思わず体が強張った。自爆テロへ向けての葬送の儀式。場所はアフガニスタン。

人間の五感でもっとも皮膚感覚に刻まれ、ふとした際に生々しく思い出すのは、画面では伝えられない臭いだと思う。マーカスがレベッカに言った「君は死臭がする」は衝撃的で、当人は気づかないが身近にいる人には分かる感覚なのだろう。
その臭いに怯えながら帰りを待つ家族と、それでも戦場へ駆り立てられるレベッカの葛藤。

あの結末はどう解釈すれば良いのか未だにわからない。レベッカは家族の元へ戻れたのだろうか。マーカスはレベッカを許し、迎えたのだろうか。

監督自身が報道カメラマンで瞬間を切り取る鍛練を積んだ人らしく、フレーミングに拘りが感じられる。凄惨なシーンもあるがカメラワークが美しい。

U2のドラマー、ラリー目当ての鑑賞だったが、思わぬ掘り出し物だった。(ラリーが俳優やってるなんてそりゃ驚いたさ)ラリーはレベッカを支える友人という重要な役どころ。シャイで誠実で、本人そのままのような静かな存在感が良かった。
マルケス

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