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福福荘の福ちゃんのdm10foreverのレビュー・感想・評価

福福荘の福ちゃん(2014年製作の映画)
3.5
【にんげんだもの】

ポッチャリ体型に坊主頭、北陸訛りで超が付くほど「お人好し」。
ぶっきらぼうな口調だけど皆から愛される不思議な福ちゃん。
でも女の人はちょっぴり苦手。
何も特別なことはない、本当に何処にでもいそうなオッサンを森三中の大島美幸が演じていることで話題になったこの作品。

鑑賞前は「そうは言ってもさ・・・」とちょっと斜に構えていたのも事実。
どんなに繕っても所詮は大島さんは「女性」であって、それを「男性」と見立ててやりきるって、真面目にやればやるほど「痛々しく」見えちゃうのかなと。

でも不思議と違和感がなかった(笑)

元々大島さんって「ある意味」中性的じゃないですか。
だからこそのキャスティングってのは百も承知の上で鑑賞してましたが・・・いるよね~ああいうおじさん。
っていうか「おじさん」と思って話しかけたら「あ、おばさんだったの?」っていうやつ。
うちの職場にもそういう方がたまに来て、みんなからは「おばさんおじさん(おばさんみたいなおじさん)」と親しみを込めて呼ばれています(勿論、陰で)。

で、今作の福ちゃんの描き方も男性として描くんだけど、変に「男」を前面に出さないというか、福ちゃんの人間味が性別云々を超越した存在に感じるんですね。
だから時折しまっち(荒川良々)がぶち込んでくる「こいつ、チン○コだけはデケ~んだよ、な!」という台詞で(あ、一応「男」っていう設定は守ってるのね)と思い出させてくれる。

物語は「福ちゃん」と、外資系の会社に勤めながら写真に目覚めた美人OLの「杉浦千穂(水川あさみ)」の二人のストーリーを交互に展開しながらも、やがて一本のお話しになっていくという「ありがちな展開」ではあったけれども、それぞれに『福ちゃんが女性恐怖症になった理由』や『千穂が心の奥底にしまいこんでいた過去の非道』というものが自然な感じで繋がっていく感じは割とすんなり入ってきた。

そうだよね。虐めた側ってそんなに悪意はないけれど、虐められた側ってずっと引きずってしまうんだよね。
「悪意のない悪」が一番タチが悪いのかもしれない。

そして彼女がそのことに気が付くきっかけ自体は偶然ではあったけど、お互いがそれを受け入れていく様が痛々しくも微笑ましいものだった。

「過去を受け入れる」というのは、決して他人の行為だけを言うのではなく、自分自身が避けて通ってきた、目を瞑りたくなるような事すらも受け入れるという事も含まれる。

風変わりな登場人物たちのお陰で全体的にコミカルな印象のこの作品だけど、根底にあるテーマ自体はとても根源的なものでもあった。
そしてそういう作品に持っていけたのは大島さんの中性的な魅力に拠るところが大きいのだと思った。

傑作、名作という評価とは縁遠い作品かもしれないけど、何故か見終わった後ほっこりする作品でした。
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