ユーライ

卍 まんじのユーライのレビュー・感想・評価

卍 まんじ(1964年製作の映画)
4.5
増村特有の濃さがそのまま百合としての強さになっている。その濃さは某姫が仰け反るほどで、「裸を見せてくれないと絶交する」だの「名前を手の平に書き綴る」なんてそうそうない。間に男が挟まることにより関係性が活性化する例でも極北であり、最初から意図して描かれたジャンルでは到達出来ない領域というものがあるらしい。手を取り合って睡眠薬を飲むという恐ろしいシチュエーションで心中、何故女と女の愛は「同一化」に向かうのだろうか。異性愛とは違う欲望の形が見える。そして仲違いになった時の冷たさがあるが、これは単に増村映画だからかも知れない。「女だって綺麗な女が好き」の理屈は『わたなれ』でも見た……正直疑う余地があるのだが、この岸田今日子の口調でまくし立てられたら納得するしかない。終盤に向かうにつれて『パラサイト』みたいな乗っ取りを一人でやってる図になるが、崇め奉る宗教要素はちょっと某事件のような実録的生々しさがある。こんな珍妙な話を聞かされる先生が気の毒。若尾文子の背中越しに首を傾げるポーズ、これはファムファタールの特権的動作なのだろう。蚊帳の網が夢であることを示すグラフィカルさ。川津祐介の口八丁手八丁の手管が長回しによって、所詮間男には収まらないアクを残していく。「異性愛と同性愛は別に考えればよろしい」。
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