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天才スピヴェットのHIROのレビュー・感想・評価

天才スピヴェット(2013年製作の映画)
3.9
モンタナの牧場で暮らす10歳のスピヴェット(カイル・キャトレット)のもとにスミソニアン学術協会から最も優れた発明に贈られるベアード賞受賞の知らせが届く。
ワシントンDCで開かれる授賞式に出席するためにスピヴェットが家出を決意するお話。

お洒落な世界観でしたな♪

独特なデザインの小道具達が画面から飛び出す様はまるでおとぎ話を観ているようでした♪( ´▽`)

身も心も時代遅れなカウボーイの父と昆虫博士の母、そしてアイドルを夢見る姉。
個性豊かな家族だけど、何となくバラバラ。
それはスピヴェットの弟レイトンの突然の死が家族みんなの心にぽっかり穴を開けてしまったから。

何を言っても理解してもらえないスピヴェットは疎外感からか、授賞式出席のために家出をする。
自分の本当の居場所を探すための壮大な旅に出るんですよね!

明け方にこっそり貨物列車に乗り込みスミソニアンを目指すその姿は危なっかしいながらも、とてもほのぼのとしていました。
スピヴェットの頭の中を抽象的な映像で表現しているところはなかなか楽しかったです。
旅の途中で出会う奇抜な人達からちょっといい話を聞き、ちょっと大人の世界に踏み込んだような。
大人達をその賢い頭で論破する姿は小憎たらしいことこの上ないんですが、どうしても彼の可愛らしさのおかげで嫌いになれないんですよね。
知恵を使って大人を振り回したりして本当に面白かったですね。
特にキャンピングカーの中の絵になりすますところはかなり笑ってしまいましたよ。

旅の途中で明かされるスピヴェットの家族への想いはとても切ない気持ちになりました。
天才児と言えども普通の子供と変わらないわけで、旅の目的はただ愛されたかったということなんじゃないですかね。
彼は偉大な発明をしてしまうほど豊かでポジティブな想像力の持ち主。
でも自分のことに関してはどうしてもネガティヴな想像力を働かしてしまう。
自分は愛されていないんじゃないか、家族から必要とされていないんじゃないか。

でもスピヴェットは家族と離れているうちに、家族の尊さを理解していくんですよね。
スピヴェットのネガティヴな考えを一気に吹き飛ばす展開はほっこりしました。
実は彼は愛されていて、発明や賞なんかよりもずっと大切なものに気付く。
わざとらしくなることはなく、じんわりと感動が押し寄せて来るような気持ちになりましたね。

窓を伝う水滴は抵抗のないところに流れていくけど、人間はそんなふうには生きられない。
スピヴェットのように不器用に生き、周りから浮いてしまうことだってあるかもしれないんですよね。
でもそういうのがいわゆる等身大の人間の姿というか、愛らしい部分なのかもしれないですな。

どこに行ったって結局行き着く先は「家」。
家族の愛おしさを感じることができましたよ。
激しく感情を揺さぶられるような派手な起伏は無いけど、何だかホッとするような作品でした。



2015-63
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