高橋早苗

天才スピヴェットの高橋早苗のネタバレレビュー・内容・結末

天才スピヴェット(2013年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

10歳の科学者
T・S・スピヴェット
モンタナ 大きな牧場が彼の家

のどかな毎日に 見えるけど
家族は皆それぞれに 傷ついている

それは 弟が死んだから。
T・Sは 自分を責めてる


弟のことを
誰ひとり話さない家族
T・Sは 居場所のなさを感じ
それを どうすることもできずにいる



父の隣に座るのは
僕じゃなく弟だ
母が 昆虫しか見ていないのも
姉が 判ってもらえない女を演じることに
ハマっているのも…


僕があの日
弟と一緒にいたのに
僕が 代わりにいなくなればよかった


☆☆★

…もう、この家族がスゴい。
見事なまでに、全員バラバラ
父はカウボーイ
母は昆虫
それぞれ自分の道まっしぐら
姉だってそう


しかも家は牧場 お隣さんなし
遊び相手はいつも 弟だった

学校への行き帰りはバス
寄り道するわけでもなく
先生にも ほとんど理解してもらえない


10歳の子ども
好きな科学に没頭し
大人びるしかねぇじゃねーか。という
この状況。

★★☆



ある日
スミソニアンから 一本の電話
ベアード賞受賞の知らせ
彼の発明が 認められた


一度は スピーチを断ったものの
スミソニアンこそ 僕の居場所
と感じた彼は 旅立つ

自分よりも大きなトランクに
荷物をつめて


アメリカ西部モンタナから
ワシントン.D.Cまでの大陸横断は
1日3回しか通らない貨物列車を止めて
飛び乗ることから始まった


出がけに持ち出した
母の日記
ぎっしり詰まった
写真と絵と言葉は 母の愛

だけどあの日以来
言葉少なになっていく


ページをめくるのは
自分の道を生きようと
踏み出した子どもでもなく
居場所を求める 放浪者でもない
ただの ホームシックの10歳



途中、怪我もし、助けられ
たどり着いたスミソニアン

驚きと共に
歓迎されるT.S
そこへこっそり招待されていた母

何食わぬ顔で母が言う
「あなたは悪くない
 誰のせいでもないの」

そして
もちろんカウボーイ姿!で現れた
父の背中に乗って帰る


☆☆★

弟が死んだのは
僕のせいじゃない
僕は
愛されていないわけじゃない


そう
子どもの想像力が
先走り過ぎたとも言える
微笑ましく壮大な勘違いw

…大陸横断までしないと
分からなかったんかい!
という感じですが(笑)


だから、面白い。
一番小さなコミュニティ、家族。

壮大なる家出
壮大なる勘違い。

冒険して初めて
気づくもの。
高橋早苗

高橋早苗