わっしょい

白鯨との闘いのわっしょいのネタバレレビュー・内容・結末

白鯨との闘い(2015年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

白鯨という神を通して描かれる、人間の傲慢さ。

世界的に有名な小説「白鯨」の基になった実話を描く映画。
捕鯨船の乗組員達と、巨大な白鯨との戦いの物語。
と思いきや、極限サバイバルの中での人間の行動や変化が主軸になっていた。

神について言及されるシーンが印象的だった。
漂流した際に、名家の生まれの船長が言う、
「神に似せてつくられたのが人間。
この星を望み通りにするように神から命じられている。
ここで死ぬ運命だとしても、神が潔い死を与えてくれる。」
みたいなセリフから、彼が良い生まれのおかげで思い通りに生きてきたことが伺える。
対して農家生まれの主人公は、
「人間は無力で塵みたいなものだ」
と返し、船長とわかりやすく対比になっている。
神について言及している船長側が、神からの教えに背くであろうことを言っているのが印象的で、自らを神に準ずる存在と認識する人間の傲慢な側面を感じられた。

この後、生き延びる為に食人を余儀なくされる展開がある。
旧約聖書では「神に背き続けると、飢えに苦しみ家族の肉を食す処罰が与えられる」とされているらしい。
まさに、傲慢な彼らに与えられた罰のように感じさせられる。

終盤、再度白鯨は彼らの前に姿を現す。
その際の人間を品定めするような白鯨の目が、彼らの生き死にを判断する神のようだった。
船長に白鯨を刺すように命じられた主人公は迷った末に刺さずに見逃し、その後他の船から救出されることになる。
もしここで白鯨を刺していたら、間違いなく返り討ちにあって死んでいただろう。
白鯨という自然界が生み出した神の化身のような存在を相手に、乗組員(人間側)の代表として正しい選択ができるかを見定められているようなシーンだった。

映画全体としては、白鯨との戦闘以外は静かめに進んでいく。
勝手に色々解釈して、咀嚼して、読み取ったけれど、ただ眺めているだけだとちょっと盛り上がりに欠けるような印象だった。
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