ユーライ

天使のはらわた 赤い眩暈のユーライのレビュー・感想・評価

天使のはらわた 赤い眩暈(1988年製作の映画)
5.0
初監督作にして以降の作品に見られるモチーフが既に登場している。死体と同伴するのは『ヌードの夜』、バブルの影響で落ちぶれた男の狂気をさらに拡大していくと『GONIN』になる。もちろん雨やネオン、超現実的な悪夢のイメージも。今作の村木は会社の金を横領するのはともかく、轢き逃げした挙句にレイプに走り軟禁する辺り最低度がかなり高い。それを打ち消しているのは竹中直人の愛嬌に尽きるが、名美の造形も都合の良い女である面が目立つ。惚れる理由がよく分からない……が深夜に雨が降りしきる最中で点描される二人の拙い会話の中から、小水が地面を伝って交わるショットなどを見てしまうと何故か納得させられてしまう。患者が空き室を使って看護婦を襲う世紀末な倫理観は『赤い淫画』等にも見られるが、そのかいもあってか結構律儀にファックシーンを入れてくれる。この名美と村木の関係は心の繋がりというよりは肉を交わらせる情愛が前面に出て来る。あての無い逃避にも関わらず二人はとても幸せそうだ。そこからガソスタで発動する柄本明(友情出演)による発砲は、余りにも脈絡がないので驚かされる。怖いよ。村木の“魂主観ショット”から迎えが来ないことを悟る名美の強さ悲しさしたたかさ。長回しで動線をゆっくり見せてからのストップモーション。場末を映しているのにここまで美しいラストショットもなく、この時点で石井隆は映画を捕まえてしまっている。他の『はらわた』よりこっち。
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