竜平

ショート・タームの竜平のレビュー・感想・評価

ショート・ターム(2013年製作の映画)
4.1
問題を抱える児童のための養護施設「ショート・ターム 12」で働く一人の女性が、自身に起こる出来事や施設で暮らす若者たちとの交流を経て過去や今後の人生とも向き合っていく。優しく、どこかリアリティー溢れるタッチで描かれるヒューマンドラマ。

監督・脚本が『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のデスティン・ダニエル・クレットンだったってのを後々知る。今作は施設で働いていたことのある彼自身の経験も基になってるんだとか。主演がブリー・ラーソンで、何やら闇を抱えつつ働く等身大の女性を好演してる。彼女のなんというか作品によって醸し出す一般人オーラというか雰囲気というか、『ルーム』でも魅せたような役作り、いいよね。共演にはまだそこまで名の知られてない頃のラミ・マレック、ケイトリン・デヴァーなど。『ゲット・アウト』や『ナイヴズ・アウト』にも出てた黒人俳優ラキース・スタンフィールドは俳優と同時にラッパーでもあったんだね、ってのも今作にて知った事実。とまぁキャストのことは置いといて。今作は主人公にしっかり焦点を当てている印象で、描かれるのは心に傷を負う若者たちのもとで働く彼女の苦悩、恋人との将来のこと、そしてその中での自身の、もっと言えば女性の心境の変化というもの。作中で出てくる自傷行為の話とか、俺自身はしたことがないからわからないけどここらへんも結構リアルな問題だったりするんじゃないかな。やがて見えてくるのが主人公にどうやらあるらしいトラウマ、過去のつらい思い出というのもの。それらと向き合っていく様から前進していく姿までなんとも見入ってしまう、そんな内容になってる。

上映時間の短さも今作に於いては功を奏してる気がする。これは単に「見やすい」ということでなく、余白を上手い具合に残してるというか、見終えた後の観客側の考える余地、受け取る余地を敢えて作ってるように見える。そんなこんなで切ないエピソードもありつつ、けれども全編に溢れる「温かみ」が非常に印象的。人はなんやかんや支え合い助け合い生きてるよなと。人と人の触れ合い、繋がりというのをじんわり感じれる、微笑ましくてハートフルな一本。あと見終えた後で思うけどジャケの走ってるシーンめちゃ良き。
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