本当にすごい監督だと思う。毎年多くの素晴らしい監督に出会うのだが、2020年はディアオ・イーナン監督の作品に出会えたというのがとても大きかった。今作のすべてが好みで、見終わってから数か月たってもなお心を離さない魅力を持っている作品だった。
フィルムノワールというジャンルに分類されるのかもしれないが、そのクールな映像は見事。そして僕の大好きな映画には共通するのだが、どのカットも目を見張る新鮮さがあり、ワンカットワンカットに意図を感じるのだ。どこを切り出しても絵になる。また、冒頭の銃撃戦、年月が移り変わるトンネルのシーンなど映像的な新しさも事欠かない。
サスペンス性もあり、どこか可笑しくてエンターテイメント性もある。それでいて現在の中国について批評性も持つ。どこまでも奥深い作品であると思う。本当に素晴らしかった。
