Utopia

6才のボクが、大人になるまで。のUtopiaのレビュー・感想・評価

4.8
2014/11/14
12年間同じ演技者で撮り続けたある種の実験的な作品で、また映画史に残る金字塔にすらなる予感も…。言葉で収めるには困難であろう濃密な人生の縮図にも関わらず、観賞後の軽やかな余韻に浸れることはもはや天晴れです。

タイトルを言い換えれば姉のサマンサがルームウエアでブリちゃんのベイビーワンモアタイムをカラオケしてたのが、iPhoneでレディガガを聞くようになるまでで。またさらにブッシュ政権はオバマ政権に変わり、その間にもゲーム機器は絶えず新しいものがリリースされ、Apple製品はアップデートされるまで。そんなことを背景にしながら主人公のメイソンは変わりゆく家族構成に困惑しつつも思春期を迎え、可愛い女の子とも恋に落ちる。12年間同じ役者で演じる、ということもありシワにせよ体格にせよ髪型にしても生きてきた年月を感じさせセリフ以上に伝わるものがある。でも変わらないところもあり、宿題を忘れるメイソンも、男を見る目がない母のオリヴィアも最後まで変わらない。人間ってやつぁは…となりますね。

10代の鬱屈とした時期にcoldplayを聞いて過ごした僕にとって、この映画のサウンドトラックが身震いするほどに秀逸で、映画館で立ち上がってガッツポーズをしそうなくらいの勢いでした。

母親役を演じたパトリシア・アークェットに賞賛の声が寄せられてるようですが、個人的には父親役のイーサン・ホークが印象深い。若い頃は自由奔放で危険な香りすらするのに年を重ねると良き父親像を見出すあたりは本人そのものを思わせ、物語をいい意味でライトな口当たりにしてくれました。

長くなったけども最後に。
感受性は歳を重ねていくと失われてく、というセリフが劇中にあり、それはまさに今の自分が遭遇する危機のひとつ。新しい事にチャレンジしたりする機会も減り、何もかもが楽しく思えた18才の頃に比べたら前向きな希望も少し薄れたりするけど、それでも十代の頃の若い感受性は形を変えて残り続けて、この映画の劇中曲に懐古する事が出来てホッとしました。


同様に時間をかけて子供たちの成長を撮影しつづけたマイケル・ウインターボトムの作品で、こちらはよりドキュメンタリーチックでイギリスらしく寒々しいイメージが強い→『いとしきエブリデイ』

内向的で文化系の趣味に没頭する弟、自由奔放で少しハラハラさせてくれる姉、神経質で堅物で過保護で愛情深いママ。極めつけはグレイテスト・サウンドトラック。ん、それってマイ・フェイバリットのあの映画と似てるじゃないか!と思い出したのがキャメロン・クロウの→『あの頃ペニーレインと』
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