butasu

マダム・イン・ニューヨークのbutasuのレビュー・感想・評価

3.0
良い映画だった。抑圧されていた女性が自分らしい生き方を取り戻す、という、言ってしまえば元祖フェミニズム映画なのだが、本作には近年のフェミニズム映画のような押し付けがましさやいやらしさは全く無い。主人公のシャシは本当に健気で真っ直ぐで、自分なんかが出しゃばるべきではないと思いつつも好奇心が抑えられない、という葛藤が観ていて非常にかわいらしく好感しか持てない。シャシを演じたシュリデヴィがかわいすぎるというのもあるかも。彼女が当時50歳近いインドの国民的女優であると知ったときには驚いた。とてもそんな歳には見えない。シャシが自らの意志で英会話スクールに通い、自己肯定感を取り戻していく過程は、本当に心が温かくなり、観ているこちらも嬉しくなってくる。

この最高の映画、唯一の難点は、シャシを見下して理解しない家族である夫と娘があまりにクズすぎること。もう本当に酷いのだ。それでも百歩譲って夫はまぁ典型的な「こういう男いるよね」タイプであり、インドというお国柄を考えれば理解できなくもないのだが、娘の最低さといったら。思春期だとか反抗期だとかでは擁護したくないクズ。こいつが物語の頭から終わりまでほとんど終始クズなので、非常にイライラした。結局この二人はシャシにロクに謝りもしない。幼い息子だけはほんとうにかわいいので、「この子がいなければ即離婚なのに!いいや、この子だけ連れて即刻離婚しろ!娘は見捨てろ!」と、家族のシーンになるたびに不快感のあまり冷静さを失ってカリカリしてしまった。この映画、シャシが家族の元を離れてニューヨークに行くまでに30分近くあるのだ。特にこの序盤は本当にただただ苦痛だった。

シャシは本当に大好きなキャラクターであり、夫と娘の存在さえ除けば最高の映画だった。
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