赤線に従事している娼婦(宮下順子)が、破滅的な生活を送っているヤクザ者(蟹江敬三)に献身する。売春防止法施行前の赤線地帯を舞台にしている、日活ロマンポルノ。清水一行・著「赤線物語」を原作に取っている。
ヒモ男に資金援助する宮下順子の人生模様をメインに据えながら、娼館内部の悲喜交交をスケッチしていく。オールスター女優&男優が次々と登場するため、日活撮影所内の娼館を覗き見ているような、奇妙な感覚を覚える。
サブシナリオでは、常連客と結婚した芹名香のドラマが展開。他の娼婦を差し置いて、新たな旅立ちを迎えるのだが、娼婦時代に培われた人間性に足を掬われてしまう。娼婦を天職としている女性視点から、廃業の虚しさを描くことに成功している。
「娼婦の世界からの脱出不能状態」と「売春防止法施行」の取り合わせの良さ。娼婦の仕事がなくなることは、自分の存在意義がなくなることでもある。同年公開「赤線最後の日」(白鳥信一監督)の姉妹編として捉えるのがオススメ。