ろく

四畳半襖の裏張りのろくのレビュー・感想・評価

四畳半襖の裏張り(1973年製作の映画)
4.5
やっぱり神代が好きだ。

実は神代の良さってのはこの飄々としてユーモアにあるのではないかと思っている。一緒にするなよと言う意見もあるだろうけど、「カモメ食堂」や「めがね」、あるいは「やっぱり猫が好き」なんかに見られる飄々としたユーモアが僕は大好きなの。セックスを描いているくせに独特の集団劇にして、くすりと笑わせる。これぞ神代の真骨頂ではないかと思っている。「開けチューリップ」や「悶絶!どんでん返し」あるいは「赤線玉ノ井 抜けられます」なんかに見られるなんとも言えないクスクスが好きだ。

今作であればなんといっても粟津号である。神代映画ではよく出るバイプレイヤーだが今回は芸者とねんごろになる若年兵を演じる。芸者にセックスを誘われて「時間がないんだよ~」と何度もいいながらズボンを脱ぐシーンなぞ笑わずにはいられない。さらには最後の謎のダッシュも好きだ。この情けなさ、切なさこそ神代映画なんだとにやにやしている。そもそもセックスはなんとも情けないものなんだよ。だって①したいから必死になる②でも相手に上手いと思われたいから自分を殺し③でも自分も気持ちよくなりたいから変な声だし④さらには裸で変な恰好をし⑤終わったあとも空白が怖いのでとってつけたようなセリフを吐く。これが「情けない」じゃなかったらなんだって言うのさ。

上で粟津がセックスをしているときに主役の二人はにやにやしながら酒を飲む。「出して、飲んで、寝る」いいんだよ。それくらいで。そう神代が言っている気がした。

※この手の映画ではよくお座敷遊びが出るけどそのシーンも楽しい。あんなことできるんだろうか!って思ってしまうけど、浅草で花電車を見たとき(あそこから吹き矢を飛ばして風船を割る)妙に感心してしまった自分がいるんでさもありなんである。コインの束をアソコで吸い込み一枚ずつだしていくシーンを見るとまさにアメージング昭和って気持ちになってしまう。
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