Bellissima

はなればなれにのBellissimaのレビュー・感想・評価

はなればなれに(2012年製作の映画)
4.0
『はなればなれに』@ユーロスペース

閉鎖された海辺の旅館に漂着した男ふたりと女ひとり。見失った時間を取り戻す時間の浪費、自己を問うミクロの一瞬を個々の問答へと移行させビジュアルに移し替えストーリーというしがらみを振り切って無軌道に進んでいく。

空気を共振させる3人の波動をもどかしくも感じるかもしれないが、そのもどかしさが観客に寄り添って温度がある。原初的欲求に忠実な冒険映画と受け取った。前半は書き言葉が肉体から発せられる役者の堅さが目に付く所で感情行ったり戻ったり。しかし中盤に女子高生のモモが合流することによって産まれるリズムとグルーヴが秀逸。画が語ってくるサイレント劇(屋上でのダンスとテニス)のマジカルを立体的に見せ心地よい酩酊感に徐々に誘い込まれていく。

自分という存在の不確かさを確認し微妙に変化した3人 「柔」になっていく男と無意識に「剛」を強めていく女。人生をスムーズに演じる為にそれぞれの役という日常に「はなればなれ」になって還っていく。

ワンシーン、ワンカットのシンプル構成に気の抜けた炭酸飲料のようだと思っていると栓を開けてから飲み終わるまで味が変化し続ける質のいいワインの様な味わい。終わってみればもう1本(頭からもう一回見返す)追加してしまいたくなる。映画の解放の先にあるものを考えている人の作品には映画史の詩情はのりうつるのだなあと。 
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