屋根裏の散歩者は、私の知る限り4作品映画化されている。
「覗き」というスリルが、ポップなエログロナンセンスとして扱いやすいのだろう。
主人公の郷田三郎は、乱歩に似ていると思うんですよ。
職は長続きせず、この世に退屈していて…。
その郷田三郎が唯一心踊ったのは犯罪擬きのイタズラで、そこから押し入れ遊び→屋根裏散歩→殺人とエスカレートしていくのが原作。
で、本作ではその過程は描かれず、屋根裏散歩のシーン、とりわけ住民の痴情が描かれます。
これはなー…。
別に、原作を無視するならするでいいんですよ。
着想だけ借りて面白い映画が出来ればいいし、本作は実際それなりには面白かったんですよ。
雰囲気もいいし、明智小五郎も滑舌が悪い他はばっちりで、情事の際に流れるバイオリンは、魔術師でのフルートを思わせて、乱歩へのリスペクトもあるのかもしれないな、と。
けれど、上記の過程がすっとんでいるので、ただの覗き趣味の変態を主人公としたエロ映画とも思われかねないし、何より殺人の動機が意味不明なんですね。
原作を知らない方が楽しめるような、知っていないと動機がわからず意味不明なような…。
微妙でした。