Tully

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密のTullyのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

映画を観る意味のひとつに、今自分が抱いている価値観とは全く違う世界が、「違う時代違う国」 にはあったのだと気づかせてくれることがある。この映画でも、イギリスがある特定の人たちに、今から見ると極めて過酷な法的待遇を行っていたことを描いていて、本当に驚かされる。この面では、日本という国はやはり特異なのかもしれない。3つの時代を行き交いながら、アラン・チューリングという偉大なる事業を成し遂げながら、決して恵まれなかった男の半生を描いていくという脚本がまず凄い。最初は年号が出るのだが、段々なくても分かるようになる。そしてラストで分かる、あるモノに主人公が名づけた名前の意味。そして、なにより 「ベネディクト・カンバーバッチ」 の演技が素晴らしい。対人関係が苦手ながらも、それをなんとか克服しようとして次第に仲間たちとの絆を深めていく不器用な男を極めて立体的に演じている。「キーラ・ナイトレイ」 もいい。普通の生活よりも自分の才能を活かしていくある意味新しい女性を活き活きと表現。単なる美人じゃなくもっと骨のある感じが出てて本当に良い。そして彼等のドラマをスリリングに、しかも奥深く表現した演出。「モルテン・ティルドゥム」 という監督はノルウェー出身だそうだが、奇抜ではなく手堅いと見せながら、冗長な部分のないシャープな編集で情報量も感動もたっぷりながら、2時間を切る作品に仕上げている。本当に上手いと思う。間違いなく傑作だと思う。観て絶対に損はない。
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