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ビッグ・アイズのsatoshiのレビュー・感想・評価

ビッグ・アイズ(2014年製作の映画)
4.2
【監督強化月間④ ティム・バートン】

 フリークスを扱ったファンタジー風味の作品を多く送り出してきたティム・バートンが放った、実話ベースの映画。バートンが実話を手掛けたのはおそらく他は『エド・ウッド』くらいだと思います。『エド・ウッド』はバートンが大好きな監督ということで、作った理由は何となく分かるのですが、今回は意図が読めない。また、少し毛色が違う作品ということで、「監督強化月間」の最後に丁度いいだろうと思い鑑賞しました。

 のはいいのですが、鑑賞してみると、実話ベースの映画なはずなのに、どこからどう見ても「ティム・バートンの映画」になっていて、彼の作家性の強さに戦慄せざるを得ませんでした。ただ、内容が実話ベースなので、そこまでファンタジー感もなく、ティム・バートン作品の中ではかなり間口が広い作品だと思います。

  まずティム・バートン全開なのは始まってすぐ映される住宅街です。整然としていて、カラフルでシンメトリー。こんなザ・ティム・バートン!なシーンの中で、主人公、マーガレット(エイミー・アダムス)が横暴な夫から逃げるシーンから物語は始まります。

  そこからクリストフ・ヴァルツ演じるウォルターに出会うわけですが、演じるのがクリストフ・ヴァルツですから。胡散臭さ100%な訳です。そこからの展開は、「女性の自立を描いた映画」ともとれるし、「夫婦もの」ともサスペンスともとれる展開になり、もちろん実話映画としても面白く、全く飽きずに観られます。

  本作でティム・バートンらしさを最も強く感じたのは、「色」でした。この映画、露骨にパキッと絵が別れていて、画面の中の色がハッキリしているのです。そしてそれらがそれぞれキャラを表し、その色の具合でキャラの関係性や立ち位置を表しています。例えば、マーガレットは赤色、ウォルターは青、といった具合にです。そして、中盤では「赤色」がだんだんと「青色」に侵食されていくといった具合に、ウォルターが主人公の作品を乗っ取ろうとしている様を見せます。

  しかし、この夫婦が完全に崩壊し、もう一度母親が逃げ出し、まだ搾り取ろうとするウォルターと戦う決心をした後の展開は痛快の一言。これはもう最近流行りのフェミニズム映画もかくやというレベルの痛快さです。

  そして反面、ウォルターが完全にギャグ担当になり、法廷での奇行は爆笑ものでした。ただ、これによって、ウォルターはティム・バートンによくいる『バットマン リターンズ』のペンギン的なキャラになり、やっぱりこの作品がティム・バートンのものなのだなと再認識させられます。

 このように、本作は実話ベースの話でありながら、立派なティム・バートン映画でした。ただ、実話ベースのお陰か、映画にはかなり入りやすく、ティム・バートン苦手な人にもオススメです。
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