ロベール・ブレッソン監督作品…10作品目…。
先日鑑賞したカール・ドライヤー監督「裁かるゝジャンヌ』の感動冷めやらぬままに今作鑑賞…。
確かに!! この2作は双璧を成す傑作と確信…。
フランスの王位継承と領土を巡る百年戦争…イギリスに蹂躙されるフランスを救ったとされる"聖処女"として英雄視されますが…国王シャルル7世までも誑かした異端者として、異端審問を受けることに…。
お墓もなく肖像画さえもないジャンヌ・ダルクは後世、様々に脚色、誇張され、神話化されてきましたが…ブレッソンの描くジャンヌはあくまでも当時の裁判記録に基づいて、忠実に彼女の孤独を淡々と描きます…ドライヤーのジャンヌ同様、思い描いていたジャンヌとは随分と乖離がありました…。
そして独房の壁の割れ目からジャンヌを覗き見する醒めた目は象徴的…まるで彼女を観察するかのような突き放した描写…。
ドラマティックなドライヤーの演出に対し虚飾や作為的なものは一切排除され、裁判と独房での問答の繰り返しに終始…その中でもジャンヌと彼女に協力的な聖職者との間で交わされる眼差しのやり取りはとても興味深いです…。
そしてドライヤーの作品では顔のクローズアップが多用されたことに対し、ブレッソンがクローズアップするのは…鎖に繋がれたジャンヌの手や足…。
刑場に向かうジャンヌがよろめきながらちょこちょこと小さな歩幅で歩く足の映像は、それだけで心許ない19歳の少女のこれから起こるであろう惨劇を想像させ、居た堪れない思いです…。
ただただ淡々と…しかし細部への拘りが兎に角素晴らしい…そこから人間の本質が否応無しに炙り出されます…。
人が人を裁くことの傲慢さ…
政治的に歪められ、踏み躙られる個人の尊厳…
それは悲しいかな…現代でも…。
ラストはとても静謐で厳かな素晴らしい映像です…。
ドライヤーの『裁かるゝジャンヌ』、ブレッソンの『ジャンヌ・ダルク裁判』…2作品共に素晴らしいですが…好みで言えば…やっぱりブレッソンが好き…ෆ*
2つの作品は次の言葉に集約されます…
『言葉を持たなかったドライエル(ドライヤー)はあのクローズアップを発見したのだし、言葉を持ったブレッソンは演技と表情を捨てたのだ』
ー 浅沼圭司氏
「ロベール・ブレッソンの研究」より ー