さわだにわか

D坂の殺人事件のさわだにわかのレビュー・感想・評価

D坂の殺人事件(1997年製作の映画)
3.6
日本家屋の暗さが素晴らしい。ストーリーはなんてことない原作をかなり大胆に改変しつつも結局大したものにはなってないので雰囲気がすべてと言っていいほどで、薄暗い日本家屋の闇の中で、通りから柵ひとつ隔てた書斎の中で、覗こうと思えばいくらでも覗ける日常のすぐ隣で繰り広げられる大正庶民の痴態が、なんてことないストーリーとどうでもいい殺人事件にいかがわしい影をつける。

表は平和だが一歩奥に踏み出せばそこに猟奇世界が広がっていることをD坂の住民はみな知っている。誰もが表の顔と裏の顔を持っていて、闇に堕ちようと思えば簡単に堕ちられてしまうことは、序盤と終盤の明智小五郎のキャラの違いっぷりを見ればわかる。そもそも贋作という題材がそうした二面性と危うさを表現するものだろう。時代設定は原作から随分とズレて昭和2年。日本が帝国主義に向かって突き進み、破滅の芽を胚胎しながらも表向きの平穏と繁栄の空約束の中にあった、薄暗い時代のことだった。

それはそうと女装の真田広之と男装の三輪ひとみが激ヤバに美しすぎてなんか目覚める映画です。
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