こたつむり

ウォークラフトのこたつむりのレビュー・感想・評価

ウォークラフト(2016年製作の映画)
3.3
剣と魔法の世界の物語。
同名のゲームが原作とのことですが…未プレイという立ち位置で鑑賞しました。

日本では某有名ゲームの影響からか、剣と魔法の世界は馴染みがあると思いやすいのですが、本来は物語特有の単語が多いため、敷居が高いジャンルなのです。だから、本作でも人物名のほかに地名とか組織名とかを把握する必要がありますし、そのことについての説明的な描写はありません。でも、物語のテンポを考えたら、それは正しい選択なのです。

ただ、観る人を突き放す描き方を選択しているのに、劇中の人物がいとも容易く心象を口にするのはチグハグな印象がありました。まあ、でも、それは映画全体を見渡せば納得せざるを得ないのですけどね。

オークと人間の戦い。能力者として実力があるが故の孤独。種族を超えた信頼、愛、友情。親から子へと受け継ぐもの。国王としての矜持。戦士としての誇り。はぐれ魔法使いの成長。などなど一本の映画に詰め込みすぎなのです!

中盤以降は、広げた風呂敷を畳むのに精一杯だったので、多少は説明的なセリフがあっても仕方無い話だったのでしょう。というか、説明されても理解が追いつかない部分もありましたし、感情的に唐突な描写もありましたからね。

これはね。製作会社側の選択ミスですよ。
本作は『月に囚われた男』や『ミッション: 8ミニッツ』のダンカン・ジョーンズ監督の作品なのですが、こういう大作感あふれる作品には向いていないと思うのです。この監督さんは、小粒だけど切れ味鋭い作品のほうが合っているんじゃないでしょうか。

まあ、そんなわけで。
色々と苦言を申しましたが、それでも、前評判が悪すぎた所為か、想定よりも楽しめました。特にオーク側の描写は結構良かったと思います。主人公格にあたる戦士は魅力的でしたね。というか、主人公を人間じゃなくオークにすれば良かったのに!(まあ、観客は減りそうですけど…)

また、終盤の展開も。
「あー。これこれ。こういうのが監督さんの持ち味よね」と思える雰囲気。うん。この部分だけでも観た甲斐はありましたね。ただ、誰にでも“続く”と判る展開は興が冷めますな。まあ、本作の脚本が詰め込み過ぎな時点で想像できましたけどね。

あ。でも。続編は作られるのでしょうか。
興行収入は全世界的には良かったらしいですが、巷の評判は芳しくないですし…。でも、監督変更で化ける可能性もありますからね。ささやかながらに期待しておきたいと思います。
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