全く偶然にこのような映画と巡り会うのだから、やっぱり入って良かったアマゾンプライム。
非常に割り切れないお話。
開拓時代、まだインディアン(と敢えて書く)の出没するネブラスカ州の荒野ということだが、とてもじゃないがこんな所に住む気はしない。一体全体、何を好んで何を求めてこんな所にわざわざ入植してくるのか理解に苦しむ…という風景。
で、「こういう環境に耐えられず精神を病んだ女性を東部の故郷に送り届ける」という教会の仕事を気丈に引き受けるヒラリー・スワンク。
実際にこういう制度があったのかはわからないが、まあこんな場所ではそういう事もあるのかもなぁ…と思わせる。
だって正直、こんな土地、見ているだけで心が荒んでくる。西部開拓って大変だったんだろうね。
ヒラリー・スワンクは素晴らしい存在感で、敬虔で働き者な女性を演じている。弱者にかける優しい言葉と眼差し、信仰と信念に生きる芯の強さ。素晴らしい女性なのだが、粗野で旧弊でオツムもそんなに良くはない開拓民の男性には若干ウザがられている。
で、ここからはネタバレなので見てない人は絶対に読まないでいただきたいのだが…
強い責任感と信念から絶対に仕事をやり遂げるであろうと全観客は信じていただろう。私もそういう結末を予想していた。
誰よりも強いと思われていた彼女だが、過酷な風景と旅の経験に足をすくわれてしまう。
神の御意思に沿うよう良き人間になろうと懸命に生きているのに、なぜ男は自分を拒むのか?
この土地は一人で生きていくには厳しすぎるのに、なぜ自分は一人なのか?
仮に仕事を終えたとして、自分は本当にあの家に帰りたいのか?
いっそこの3人のように精神を病んでしまえば楽になるのかもしれないが、なぜ自分は正気を保っているのか?…
本作の監督主演であるトミー・リー・ジョーンズ、世慣れた小悪党だが、これまた振れ幅の大きい人物を演じている。非の打ちどころない態度で女性に接するかと思いきや、放火皆殺しも平然とやってのける。
まあここまではないにせよ、人間ってこんなもんやろうな。特にあのような時代には、こういう人物でなければ生き抜いていけなかったのだろう。だからこそヒラリー・スワンクは命を絶ったのだ。
あの流れていった墓標はどうなったのだろう?
多分、トミー・リー・ジョーンズは「あれ?まあしょうがないか…」って感じですぐに忘れてしまうのだろう。
その後墓標は彼女の眠る近くまで流れ着き、そこで朽ちていったに違いない。
この映画に巡り会えて良かった。
(ちなみに「ミッション・ワイルド」で検索したら「ワイルド・ミッション」ばっかり出てきて、それっぽいアクション映画と誤解されそう。原題は『Homesman』であり、一体誰がつけたんやろこの邦題…)