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ジミー、野を駆ける伝説の一人旅のレビュー・感想・評価

ジミー、野を駆ける伝説(2014年製作の映画)
3.0
ケン・ローチ監督作。

1930年代のアイルランドを舞台に、実在の活動家:ジミー・グラルトンの生き様を描いた伝記ドラマ。

イギリスの名匠:ケン・ローチが、人々の自由のために権力と闘ったアイルランドの活動家:ジミー・グラルトン(1886-1945)の実話を映画化した“社会派+伝記ドラマ”の佳作で、主演のバリー・ウォードを始めアイルランド出身の俳優が数多く起用されています。

アイルランド独立戦争(1919-1921)、そしてアイルランド内戦(1922-1923)終結から約10年後の1932年を舞台に、逃亡先のアメリカから10年ぶりに母国アイルランドに戻ってきた主人公:ジミーが、労働者階級や若者達のために、歌やダンス、スポーツ等を皆が自由に楽しめるホール(集会所)を再開するが、それを快く思わない地主や神父が主人公の活動に横槍を入れてきて―という、1930年代前半におけるアイルランド情勢を背景にした伝記ドラマとなっています。

“自由”を追求する主人公が、保守的・排他的な権力者を相手に武力を用いず抵抗していく様子を描いた実話物で、歌やダンス、絵画といった身近な自由でさえ社会の害悪と捉えて卑劣な手段で排除しようと躍起になる神父ら権力者達の欺瞞に対して、アメリカで自由の風を一身に浴びてきた主人公が彼を支持する労働者階級の仲間達と共に毅然と立ち向かっていきます。

30年代当時のアイルランド社会を背景にして“抑圧された自由の解放”を主人公の行状を通じて導き出していく社会派な一篇であり、自由を尊ぶ主人公の不屈の魂が、現地に残ったアイルランドの未来を担うであろう若者達の新たな自由の種となりやがて花開いていくことを予感させる希望的結末が味わい深い佳作となっています。
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