ぴろぴろ

ケープタウンのぴろぴろのレビュー・感想・評価

ケープタウン(2013年製作の映画)
4.1

衝撃のある、かなりキツイ描写が多いが、見応えが有った。容赦無い凄惨で残虐なシーン。最初、私ダメかも…苦手なタイプの映画に思えてR15で良いのかなぁ、これR18じゃないのかなぁ、選択間違ったかなぁ と思いながら、手で目を覆いつつ、でも指の間からしっかり観る みたいなのが続いた。これ、南アフリカだからこそのストーリー。酒場のカウンターに鉄格子が有るくらい、治安の悪さがハンパない。銀行とかどうなってるんだろ。 ポスターには『そこは、神に見捨てられた街』とある。確かに神も仏も無い、犯罪がまかり通る街。白人が住むのは高級住宅。海が見えるバルコニーだったりプール付きだったり。一方黒人達が暮らすのはバラック小屋のスラム街。貧富の差は歴然としていて、まだまだアパルトヘイトの名残が見て取れる。黒人のアリと白人のブライアンとダン、3人の刑事が、殺人事件の捜査を進めるうちに、実はとんでもない事が…。
この3人が夕食を共にしている時に、マンデラ大統領の言葉を引用してアリが『敵と働いてみる。そうすれば敵はパートナーとなる』『赦す勇気と知恵』みたいな感じの話をするシーンが印象的で、そして最後に効いてくる。

暗闇から やがて夜が明け、広大な砂漠の中を静かにジワジワ、諸悪の根源を追い詰める。セリフは全く無くとも、知恵も勇気も有るけれど、幼い頃からの積年の悔しさ、怒り、憎しみが滲み出ていて 鬼気迫るすごいシーンだった。
この砂漠の夜明けを見て、20年くらい前に観た『遠い夜明け』というアパルトヘイトを描いた作品を思い出した。まだまだこの国にある根深く暗い闇を感じずには居られない。

オーランド・ブルームの優秀だけど女にだらし無いチャラ男っぷりと、アリの背景にある悲しい過去と、それ故の現在の彼を静かに上手く表現していたフォレスト・ウィテカーの2人は素晴らしく、自然の美しさと共に忘れられない作品の一つとなった。ラスト、オーランド・ブルームの墓石の名前のシーンもちょっと大人になったのかなと思えて、良いと思った。
描写が残虐で、万人受けはしないと思うんだけど、面白いかどうかと問われたら、面白い映画だった。観て良かった。
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