アレン映画には、占い師や霊能者(この映画ではカルトという言葉が使われていた)がよく出てくる。死んだ人の霊を呼び出し、会話するシーンには既視感が(笑)。いかにもトランス状態なエマ・ストーンの妖しい表情、亡き夫と会話するジャッキー・ウィヴァーの感激した面持ち。どちらも絶妙。見えない力にすがりたくなる人々と、そこにつけこんで商売する人々。風刺してはいるが、アレン監督は、間違いなくそんな人々が大好きだ。観客も笑いながらもちょっと共感してしまう。
「みんな幻想だ」
「誰も傷ついてないわ」
魔法にはかかってみたいけれど、イカサマに騙されるのは嫌だ。魔法とイカサマの境界はどこなんだ。
タネも仕掛けもあるけれど、ディズニーランドは魔法の国だ。心を安らかにしてくれるかもしれないが、悪霊をはらう壺は、イカサマだ。
エマ・ストーン演ずる霊能者はイカサマに見えるが、大きな瞳が輝く、彼女の美しさは魔法である。コリン・ファースの瞬間移動にはトリックがあるが、恋愛に不器用で傲慢な手品師を演じていても、どこか英国王の気品あふれる彼の佇まいは、魔法かもしれない。
花が咲き誇るコート・ダジュールの庭園、プロヴァンスの海、古い天文台から見上げる三日月。巧妙な仕掛けにまんまとはまる。これぞアレン・マジック。