Masataka

ルック・オブ・サイレンスのMasatakaのレビュー・感想・評価

ルック・オブ・サイレンス(2014年製作の映画)
4.0
とにかく衝撃的で、コメディ要素やメタ要素や映画的カタルシスもあった「アクト・オブ・キリング」に比べて、本作はタイトルの通り静かなドキュメンタリーで、じりじりとした緊張感に包まれている。
有名なナチスのアイヒマン裁判において、政治学者ハンナ・アーレントは、ユダヤ人虐殺を主導したアイヒマンを、取るに足らない小役人だと見做した。そのような「凡庸な悪」がいかに有り得るかというのが前作と続いて本作でもよくわかる。
人は自分に責任がないという意識さえあれば、どこまでも残酷に悪を実行できるのだ。それでも無意識下に罪悪の感情があって、それを暴いたのが前作だったが、今作でははっきりとは見えてこない。しかしアディが被害者遺族だと明かした時、虐殺者たちの反応は様々ながら明らかに動揺していた。気が狂わないように殺した人間の血を飲んだというおぞましいエピソードも、ただの迷信ではなく、狂気に狂気を重ねることで自身の罪悪感さえも殺そうとした行為なのだと思えてくる。
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