ちろる

夏をゆく人々のちろるのレビュー・感想・評価

夏をゆく人々(2014年製作の映画)
3.4
イタリアのトスカーナ地方を舞台にした作品はいつも無条件に私をワクワクしてくれるはずなのに、子どもらしくいられる時間を削られたジャルソミーナを見ながら何事もなかったように美しく笑顔で過ごす場面を見てもすっきりとはせず、私はどうもモヤモヤしてしまった。
子供は子供らしく、無邪気で親の顔色なんか伺わないでほしいと思うのも私のエゴイズムなのかもしれないけれど、例え娘が父を慕い父が娘を愛していても娘は父の完全な私物ではないはずだ。
家の仕事を学ばせる事で成長させることは素晴らしいことでも、家の事業の働き手として子供を作っているように見えてしまうこの父親は最後までどうしても好きになれなくて、みずみずしい子どもたちの描写も、自然と一体化した美しい家族の営みもすんなりと受け入れられなかった作品ではありました。

自然と営む家族を描いたという点では似たような話で「はじまりへの旅」を思い出すけれど、この家族の父親ウルフガングの威圧感はあの作品のベンのように私にとって愛すべき不器用な父親とは映らなかったのは、母親の立場に共感してしまったからなのかな。
子供の視点を中心に自然な演技を導き出すドキュメンタリータッチの作品で、少女や少年たちの自然な動きや表情が可愛いのでそこはこの作品の癒しポイントでもある。

日本でいう是枝作品のような風味があって、この手の雰囲気は嫌いではないのにもっとこのウルフガングの事が好きになれればこのストーリーも好きになれたのにと思ってしまいました。
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