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Mommy/マミーのLzのレビュー・感想・評価

Mommy/マミー(2014年製作の映画)
5.0
強烈な印象を受けた作品。
グザヴィエ・ドラン監督のさらなる魅力を確と感じた映画。

痛々しい愛が右往左往して、石に打ちつけられて飛び出るような思いが常に彼らを覆っている。
”愛しているからこそ”、ただその一心で向き合うしかなかったダイアンとスティーヴ。見ているこちらもひたすら胸が締め付けられて苦しくなって、切実過ぎる互いの言動をただただ見守るしかできなかった。
いくら愛しているからといって、血の繋がった唯一無二の家族だからといって、真っ直ぐ愛が通るわけじゃない。綺麗事じゃ済まない。むしろ、家族だからこそ、互いの愛が傷みを以って突き刺さってきたのだと。恋人みたいに、柔らかく滲んでくるようなものじゃない。

ドラン監督特有の、愛の伝え方、その扱いに対するジレンマと曖昧さ、時に鋭く爪を向けてくるような、愛の素性を垣間見た気がした。
ドラン監督は、作品に秋の季節を使うことが多い印象を受ける。映像を思い出そうとすれば、鮮烈に橙色な紅葉が浮かび上がることが多い。ドラン監督からすれば、秋は人を裸にする季節なのだろうな。
汗をかく夏が終わり、寒さが肌に刺さる秋には、夏には感じなかった侘しさや心の隙間が広がり始める。人肌恋しくなる季節と言うけれど、ドラン監督としては、秋は人の心を剥き出しにするのに持ってこいの季節なのだと思いう。だからこそ、余計切なくて、求めるのに曝け出しすぎるというか、そんなジレンマがテーマの一つでもあるのだろうな。

最も印象的だった、口元に手を押し当て口づけ。このシーンにこそ、二人のもどかしい愛が表れていた。このシーン、やっぱりみんな惚れるよね。ドラン監督らしいし。

スティーヴがダイアンを見つめるその瞬間瞬間が、本当に切なくて堪らなかった。人から人への愛というのは、形を表現できるものじゃない。多種多様過ぎるから。大袈裟な様に見えて、ダイアンに対するスティーヴの愛情は、人間が持つ本当の愛の姿だったのではないかと思う。歪にも見える彼らの愛情は、ある側面から見ると驚くほど真っ直ぐだったりする。そんな親子の愛を表現したドラン監督、本当に素晴らしい。

ドラン監督手掛ける作品はキャストが共通で、毎度素晴らしい熱演。本作も見事な演技で、入り込まされた。他作品の役がチラつくこともない。

この映画のラストシーンも大好き。ドラン監督は余韻を作るのが本当に上手い。
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