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Mommy/マミーのkouのレビュー・感想・評価

Mommy/マミー(2014年製作の映画)
5.0
《感情の共有》
去年の「たかが世界の終わり」の公開からずっとグザヴィエ・ドラン監督作を見てきてレビューを挙げた。そのたびに何度も書いていることだが、若くして天才とはこの監督の事を言うのだと思う。「マイ・マザー」を初めて見たときの衝撃。そして「わたしはロランス」でその思いは確信に変わった。傑作を何本も撮り続けている。

養育不可と判断された子供が無条件で施設に入所できる架空のカナダ。ADHDの息子スティーヴを持つ未亡人のダイアン。ダイアンとスティーヴの生活は感情のコントロールの難しいスティーヴの行動で振り回される。そこに向かいの家に住むカイラと出会う。彼らの生活は変わっていく。

グザヴィエ・ドランが描くのは決してフィクションの世界ではない。身近でありシリアスな内容を、ドラマチックにエモーショナルに描く。それを彩るのは色遣いの美しい画面と見たことのないようなシーンの数々だ。今作では1:1の画面比で描かれる。それは彼らの閉塞感であり、観客が登場人物の生活に集中される効果も生む。彼らの息の詰まりそうな緊張感、人生に没入するのだ。そして、その1:1の画面比が変わったとき、僕等も同時に深い感動に包まれる。

しかし、現実はそれだけでは終わらない。三人の生活にも終わりが来るのだ。そこで見るダイアンの夢、そしてその後の展開には胸が締め付けられる。深く切なく、決してきれいごとで終わらない、真実味をもって映画は語られる。息苦しく、ハードな人生だ。でも未来を見る。そして何かを決断する。それを繰り返して、日々は続くのだと思う。
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