こなつ

サンドラの週末のこなつのレビュー・感想・評価

サンドラの週末(2014年製作の映画)
3.8
カンヌ映画祭の常連、ベルギーの名匠ダルデンヌ兄弟の作品。ダルデンヌ監督との出会いは「午後8時の訪問者」。とても好きな作品でそれ以来監督の作品は幾つか鑑賞している。人々に訴え掛ける問題作を撮り続けている監督の作品は、重くて暗いものが多い。淡々と流れる映像は鑑賞中は何が云いたいのかと理解に苦しむ場面が多々あるのに、観終わった後、必ず温かな気持ちが湧き出る。

この作品「サンドラの週末」は、監督作品の中ではタイトルもジャケ写も明るい雰囲気なのが気になっていた。「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」のオスカー女優、マリオン・コティアールが華やかさを封印して、弱く繊細な1人の女性を見事に演じている。

工場で働く女性のサンドラ(マリオン・コティアール)は、長期療養から復職する直前の金曜日に解雇を言い渡される。会社側は、彼女の解雇に従業員が同意する事で、ボーナスを出すと提案。しかし、親しい同僚の計らいで、月曜日に同僚達の投票を行い、彼らの過半数がボーナスを諦めサンドラを選べば仕事を続けられることになる。その週末、サンドラは夫(ファブリツィオ・ロンジョーネ)に支えられながら、同僚達を説得して回る。

どのような言葉で人の心は動くのか、友情とお金を天秤に掛けられるのか。ドラマチックな展開もなく、ただ田舎町を説得して回るサンドラの姿をカメラがひたすら追う。人と人との絆、人間の強さと弱さ、16人の同僚達との会話で浮き彫りになる。ノーメイクで髪もボサボサ、精神安定剤が手放せない危なっかしいサンドラを演じるマリオン・コティヤールの圧巻の演技は見事。またダルデンヌ作品に多く出演している夫役のロンジョーネの柔らかく優しい演技にも重苦しさが救われる。ラスト、電話で健闘を讃えあった夫婦の会話が温かい。

こんな無茶な話があるのだろうか?経営者の資質不足、社員は結局使い捨て、同僚達の裏切り、、これは実際にフランスにあるプジョーの工場で起きた出来事が題材となっている点でも、非常に興味深く鑑賞出来た。
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