こなつ

マダム・イン・ニューヨークのこなつのレビュー・感想・評価

4.0
2014年9月劇場で鑑賞したが、レビューが書きたくなって今回再鑑賞。英語の苦手なインド人主婦がニューヨークの英会話学校に通うようになった事をきっかけに自信と誇りを取り戻していく姿を描いている心温まる物語。

主役のシュリデヴィは、若い頃からインド映画界の伝説的な人気女優だったが、プロデューサーとの結婚を機に俳優業を休んでいた。その彼女が本作品で15年振りに銀幕に戻ってきた。しかし、それから数年後の2018年甥の結婚式で訪れていたドバイで、急死している。こんな素晴らしい作品を遺して、54歳の若さでこの世を去った。亡くなったというニュースを聞いて(ムンバイで行われた葬儀は盛大だった)追悼の再鑑賞をして以来の今回は3度目。

インドで仕事に忙しい夫と我儘な2人の子供に尽くす、ごく普通の主婦シャシ(シュリデヴィ)は、家族の中で自分だけ英語を話せない事で悩み、いつも疎外感を感じていた。姪の結婚式の為にニューヨークに行った彼女が、思わず飛び込んだ英会話教室。仲間達と出会い、英会話を学ぶうちに、夫に頼るだけの主婦から彼女は1人の人間としての自信を取り戻していく。

日本以上に保守的なインド、そう思っていたが、最近まで日本の結婚生活もインドと何ら変わりない、保守的極まりない、主婦の立場だったことを痛感した。子育て、家事は女性がするのは当たり前、感謝もなく、敬意もない。「料理は男性にとっては芸術でも、女性にとっては義務」というシャシの言葉。今でこそ、料理だって家事だってやれる方がやるというスタンスになってきているが、それでも仕事、家事、子育てという忙しさの中で1歩を踏み出せない主婦達が多いのではないだろうか。そんな人達に勇気を与える本作は、いつの間にかシャシを心から応援してしまう。

自分自身を愛することが、幸せな結婚生活を続ける秘訣という、シャシの素晴らしい英語のスピーチにも胸を打たれた。

2014年頃からインド映画が好きになって劇場で良く観るようになったが、この作品でも結婚に向けて喜びを表すボリウッドダンスが登場する。インド映画にダンスシーンが多いのは文化的背景があって、インドの文化では男女の恋愛を表現するシーンを避ける風習があり、その代わりにダンスシーンを取り入れるらしい。インド人は、ダンスが大好きな民族なんだとばかりずっと思っていたのだが、そういうお国柄を知ってボリウッドダンスも楽しめるようになった。(2024.05 UNEXT)
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