お豆さん

人生スイッチのお豆さんのレビュー・感想・評価

人生スイッチ(2014年製作の映画)
3.0
見終わった後に、どれだけアルゼンチン人がいかれてるか、という話で盛り上がった。私の知ってるアルゼンチン人はマトモな方ばかりなのだが、いろいろ聞いてると、この映画に出てくるような人がいてもおかしくないのかも。

この手の「人間の底辺」に達しちゃった人たちの物語を、まったくの他人のものとしてゲラゲラ笑えずに、ある程度のリアリティをもって受け止めてしまう私もまた底辺に近い人間なのかもしれない。だって「ヒーローになるために」なんて、日常的にありがちなシチュエーションで、主人公には主人公なりのストレスの積み重ねがあり、彼が不当だと感じるポイントはものすごく共感できる。それに対して窓口の人たちは日頃から彼のような人々を相手にしていて、いちいち個別的に親身になっていたら、彼らは彼らで爆発してしまうだろうから、やはり理にかなっている。その後の主人公の行動は、妄想することはあっても行動に移す人はいないだろう。だからこそ、こうして私たちは映画を見て、主人公たちが私たちの怒りや不満を代弁してくれることで溜飲を下げるのである。でも、現実的に実行に移すような人間もいる世の中を思うと(「むしゃくしゃしたから」という理由で犯罪を犯す人とか!)、ちょっと笑えないかもしれない。とはいえ、さらにその先にオチを持っていくあたり、やはりラテン系のいかれ具合というのは一筋縄ではいかないのだ、ということをまざまざと思い知らされた。

私はこの映画を見てスッキリした!というより、逆にストレスを溜めてしまったのだが(ラストのエピソードによって救われた)、これが大絶賛される世界というのは、やはり思った以上にストレスが溜まってるのかもしれない。

2017. 11
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