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バードピープルのkouのレビュー・感想・評価

バードピープル(2014年製作の映画)
3.0
《閉塞と自由》

映画館でちょうどやっていて前情報が全く無い状態で見たこともあるのだけれど、とても不思議な映画だった。前半と後半でテイストがかなり変わることに驚いた。前半はパリに出張に来てホテルに泊まる男、ゲイリーの話。仕事に疲れ、妻との生活もすれ違いが進んでいる。彼は仕事をやめ、妻と別れて新たな生活を始めようとする。後半は男の泊まっているホテルで働く女子大生、オドレーの話。彼女も学校とバイトを行き来する今の生活に嫌気が差している。2人の僅かな関わり、空港という場所の物悲しさや魅力、閉塞と自由について描かれた静かな一作だった。

前半、ゲイリーの話はとても閉塞感のある話だ。今までとらわれてきたものや無理して続けていたもののつながりを全て捨てていく。その作業は観ている側も憂鬱になるほど。仕事や家庭に擦り切らし続け、ついに切れた糸から、今まで背負ってきたものを捨てる作業はそうたやすいものではなく、重い空気が流れる。

後半、オドレーの話は途中から物語のテイストがかなり変わる。観ている側も驚くような変化をオドレーがするのだ。たどたどしいながらも彼女が文字通りの自由を手に入れる瞬間があり、心を奪われる。彼女が夜の空港の瞬きを見ながら自由を手にしたシーン、かかる音楽はデビッド・ボウイの「Space Oddity」。前半の閉塞を打ち消すようなその映像が良かった。前半の閉塞感はこの解き放たれた自由なシーンのためにあるのではないかと思う。

僕が個人的に好きだったのは変化した後のオドレーを日本人が描くシーン。ゲイリーとオドレーもそうだけれど、深い関わりではないが、人と人の出会いの魅力にあふれていると思う。空港という場所は様々なドラマにあふれている場所だ。そんな魅力もこの映画には含まれているのではないかと思う。
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