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アメリカン・スナイパーのkouのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
5.0
戦争が人間を狂わせていく様を描き、アメリカの光と闇を描いている傑作。まずは戦場における緊張感の描き方、そしてそれと対比させるような日常。次第にそこの境界が崩れていき、一人の英雄の苦悩を描いた作品であった。本国では公開後に論争を生んだというが、そのまま素直に見ればどこも愛国的ではなく、戦争支持でもない。

カイルの少年時代から軍人になり、そして戦場で多くの味方を救うさまを描く。しかしながら彼の行っていることは殺人に間違いなく、彼は次第に心を蝕んでいく。少年時代、彼が父から言われる言葉は、彼の戦場での生き方に表れる。仲間を守る存在であったはずなのに、次第に狼となり危険な存在になってしまうのだ。

今作の絶妙なバランス。そして映画としての完成度の高さ。勿論映画としてスリリングであり、牽引力が凄まじく、「面白い」ことに間違いないが、見終わった後の疲労感は相当なものだった。それは今作のラストが提示するものであり、エンドクレジットにも表されている所だろう。誰もが強烈に引き付けられる作品であることに間違いない。素晴らしい映画だった。
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